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妊娠中に美容医療はできる?妊婦が受けられる施術と避けるべき成分とは?

妊娠中の肌の変化に戸惑いを感じている方は、決して少なくありません。ホルモンバランスの急激な変動により、これまで経験したことのないニキビや色素沈着、乾燥やかゆみといったトラブルが突然現れることがあります。

特に、季節の変わり目や気温・湿度の変化が大きい時期には、妊娠による肌の敏感化と環境要因が重なり、肌荒れが悪化しやすい傾向があります。年末年始や大型連休、新生活のスタートといったライフイベントが重なる時期には、写真撮影や人と会う機会も増え、肌の状態が気になる場面も多いのではないでしょうか。

しかし、いざスキンケアを見直そうとしても、「妊娠中はこの成分を避けてください」「この施術は妊婦さんにはお断りしています」といった情報ばかりが目に入り、何をどこまで使ってよいのか分からなくなることがあります。インターネット上には「妊娠中は一切の美容医療がNG」といった極端な情報も散見されますが、実際には医学的根拠に基づいた判断が求められ、すべてが一律に禁止されているわけではありません。

ここでは、妊娠中に美容施術や特定の成分が制限される理由を医学的観点から解説し、成分ごとの安全性を日本皮膚科学会のガイドラインや海外の研究に基づいて整理します。「避けるべきもの」と「条件付きで検討できるもの」の違いを正しく理解することで、妊娠中でも無理なく続けられる肌ケアの指針を見つけていただければ幸いです。

 

 

なぜ「妊娠中はNG」とされる施術が多いのか?

妊娠中に美容クリニックを訪れると、「申し訳ありませんが、妊娠中の方への施術はお断りしています」と言われた経験のある方もいるかもしれません。普段から通い慣れた施術であっても、妊娠を告げた途端に対応が変わることに戸惑いを感じるのは自然なことです。

しかし、こうした対応の背景には、単なる「念のため」ではなく、医学的な根拠に基づいた判断があります。多くの場合、胎児への直接的な悪影響が証明されているわけではなく、「母体への負担」や「予防原則」という考え方が制限の主な理由となっています。

この章では、施術が断られる本当の理由と、成分の経皮吸収に関する医学的な仕組みを整理していきます。

この章のポイント
・施術制限の主因は母体ストレスや体勢の問題
・成分の吸収量は分子量や脂溶性で大きく異なる
・「念のため回避」は予防原則に基づく判断

胎児への影響よりも「母体への負担」が主な理由

美容施術が妊娠中に制限される理由として、まず挙げられるのが「母体への物理的・精神的負担」です。意外に思われるかもしれませんが、多くの施術が断られる理由は、薬剤や機器が胎児に直接害を及ぼすことが証明されているからではありません。

たとえば、レーザー治療を例に考えてみます。レーザーの光は皮膚の表層から真皮にかけて作用するものであり、物理的に子宮まで届くことはありません。胎児への直接的な影響を示す報告は、現時点では確認されていないのが実情です。それにもかかわらず、ほとんどのクリニックでレーザー治療が妊娠中に禁忌とされているのはなぜでしょうか。

その理由の一つは、施術中の「痛み」がもたらすストレスです。妊娠中はホルモンバランスの変化により、痛みの感じ方が通常時と異なることが知られています。エストロゲンやプロゲステロンの変動は痛覚閾値(痛みを感じ始める境界)に影響を与え、普段は耐えられる程度の刺激でも強い痛みとして感じられることがあります。こうした痛みによるストレスは、理論上、子宮収縮を誘発するリスクがゼロとは言い切れません。

もう一つの理由は、施術中の「体勢」です。多くの美容施術は仰向けの状態で行われますが、妊娠中期以降になると、仰向けの姿勢を長時間続けることが母体にとって負担となります。大きくなった子宮が下大静脈(心臓に血液を戻す大きな静脈)を圧迫し、血圧低下やめまい、気分不良を引き起こす「仰臥位低血圧症候群」と呼ばれる状態を招く可能性があるためです。施術時間が30分を超えるような場合、このリスクは無視できません。

さらに、妊娠中は「炎症後色素沈着」のリスクが高まることも、施術を避ける理由の一つです。炎症後色素沈着とは、レーザーやピーリングなどで肌に刺激を与えた後に、シミのように色素が残る現象を指します。妊娠中はホルモンの影響でメラノサイト(色素を作る細胞)が活性化しやすい状態にあり、通常時であれば問題なく回復する程度の施術でも、予想外の色素沈着を残してしまうことがあります。

こうした理由から、レーザー治療をはじめとする多くの施術は「効果が不安定」かつ「リスクが通常より上昇している」として、妊娠中には推奨されない傾向にあります。これは「危険が証明された」というよりも、「この時期にあえて行う必要性が低い」という判断に基づくものといえるでしょう。

経皮吸収のメカニズムと「予防原則」の考え方

施術だけでなく、スキンケア成分についても「妊娠中は避けてください」と言われることがあります。ここで理解しておきたいのが、成分が皮膚から体内に取り込まれる「経皮吸収」の仕組みと、医学における「予防原則」という考え方です。

皮膚は外界からの異物侵入を防ぐ「バリア機能」を持っています。最外層の角質層は、死んだ細胞が何層にも重なった構造をしており、多くの物質はこの層で止まり、血中に大量移行することはありません。化粧品に含まれる成分の多くは、このバリアを越えて体内に入り込む量がごくわずかであるため、通常は全身への影響を心配する必要がないとされています。

ただし、すべての成分が同じように振る舞うわけではありません。経皮吸収の程度は、主に以下の要因によって決まります。

  • 分子量:一般的に分子量500ダルトン以下の小さな分子は、角質層を透過しやすい
  • 脂溶性:油に溶けやすい成分(脂溶性が高い成分)ほど、皮膚の脂質層を通過しやすい
  • 濃度と塗布面積:高濃度で広範囲に塗布するほど、吸収量は増加する
  • 皮膚の状態:傷や炎症がある部位では、バリア機能が低下し吸収が増加する

皮膚の最外層である角質層がバリアとして機能し、多くの成分はここで止まります。しかし、分子量が小さく脂溶性の高い成分は、このバリアを透過して真皮の血管から全身循環に入る可能性があります。

「内服」と「外用」の決定的な違い

経皮吸収の仕組みを理解する上で、「内服」と「外用」の違いを明確にしておくことは非常に重要です。同じ成分であっても、摂取経路によって体内への取り込み量は大きく異なります。

この違いが最も顕著に現れるのが、レチノイド(ビタミンA誘導体)です。

内服のイソトレチノインには、明確な催奇形性(胎児に奇形を引き起こす性質)が確認されています。1980年代に行われた研究以降、妊娠中に子宮内でイソトレチノインに曝露された胎児には、頭蓋顔面奇形、心臓奇形、中枢神経系の異常などのリスクが報告されてきました。

リスクの程度については、PMC(米国国立医学図書館)に掲載された2021年のレビュー論文で「子宮内曝露による催奇形性リスクは20〜35%と推定される」と記載されています。

一方、2006年以降に妊娠予防プログラムが導入されて以降の調査では、実際の奇形発生率は約15%程度に低下しているという報告もあります(Obstetrics & Gynecology Science, 2021年メタ分析)。

いずれの数値を採用するにしても、イソトレチノインが妊娠中・妊娠予定の女性にとって「絶対禁忌」であることに変わりはありません。服用中は確実な避妊が必要であり、服用終了後も一定期間(通常1ヶ月以上)は妊娠を避けることが求められます。

一方、外用のレチノール(化粧品に配合される濃度)については、状況が大きく異なります。外用レチノールの経皮吸収量は内服と比較してごくわずかであり、血中のレチノイン酸濃度を有意に上昇させないことが研究で示されています。

イタリアの研究チームが2016年に発表した論文(G Ital Dermatol Venereol)では、「外用トレチノインの単回投与および長期使用のいずれにおいても、内因性のレチノイン酸やその代謝物のレベルに影響を与えなかった」と報告されています。

また、複数の前向きコホート研究(追跡調査)において、外用トレチノインと先天異常との間に統計的に有意な関連は認められていません。それでも、欧州医薬品庁(EMA)をはじめとする多くの規制当局は、外用レチノイドについても「妊娠中は使用を避ける」ことを推奨しています。これはなぜでしょうか。

ここで登場するのが「予防原則」という概念です。予防原則とは、「科学的に有害性が完全に証明されていなくても、重大な影響が懸念される場合には予防的措置を講じるべき」という考え方を指します。

外用レチノールについていえば、「催奇形性を示す直接的なエビデンスはない」ことは事実です。しかし同時に、「妊婦を対象とした大規模な安全性試験が実施されていない」ことも事実です。倫理的な理由から、妊婦に対して意図的に薬剤を投与する試験を行うことは困難であり、この種のデータは今後も得られにくいと考えられます。

こうした状況において、規制当局や医療従事者は「わずかでもリスクの可能性があるならば、美容目的での使用は避けるべき」という判断を下します。これが予防原則に基づいた対応です。

したがって、「妊娠中は避けてください」という注意書きを見たときに、それが「危険が証明されている」という意味なのか、「安全性が確認されていないため念のため回避」という意味なのかを区別することが大切です。多くの外用スキンケア成分は後者に該当します。

 

妊娠中の施術・成分を判断するための目安

ここまで解説してきた内容を踏まえ、妊娠中の施術や成分の判断基準を表にまとめます。これらはあくまで一般的な目安であり、個人の体調・妊娠週数・既往歴によって判断は異なります。実際に使用する際は、必ず医師にご相談ください。

施術編

施術名 判定 主な理由
レーザー治療全般 × 痛みストレス・色素沈着リスク増
光治療(IPL等) × レーザー同様の理由で回避
ケミカルピーリング 効果不安定・肌トラブル増加
イオン導入 成分の安全性を個別確認が必要
ボトックス注入 × 安全性データ不足・延期推奨
ヒアルロン酸注入 × 安全性データ不足・延期推奨

【凡例】○=検討可能 △=医師判断で限定的に可能 ×=回避推奨

成分編

成分名 判定 理由・備考
アゼライン酸 催奇形性試験陰性。ガイドライン記載
過酸化ベンゾイル 吸収後すぐ代謝。ACOG推奨
ビタミンC(外用) 安全性高い。継続使用可能
ナイアシンアミド 安全性確認済み
トラネキサム酸(内服) TGA分類B1。長期使用は延期推奨
トラネキサム酸(外用) 内服より吸収少。長期は避ける
レチノール(外用) × 予防原則で回避推奨

【凡例】○=使用可能 △=医師相談の上で限定使用 ×=回避推奨

成分編(追加成分)

成分名 判定 理由・備考
サリチル酸(2%以下) ACOG推奨。洗顔料等は使用可
サリチル酸(高濃度ピーリング) × 吸収率増加。アスピリン類縁
グリコール酸(低濃度) 表皮レベルの作用
イソトレチノイン(内服) ×× 絶対禁忌。明確な催奇形性
ハイドロキノン × 吸収率35-45%と高い
バクチオール 安全性データ不足。要医師相談

【凡例】○=使用可能 △=医師相談の上で限定使用 ×=回避推奨 ××=絶対禁忌

※出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」、TGA(オーストラリア医薬品行政局)妊娠カテゴリー分類、ACOG(米国産科婦人科学会)ガイドライン、PMC掲載論文 等

 

【顔・肌ケア】妊娠中でも相談可能なクリニック施術

前章では、妊娠中に美容施術が制限される主な理由が「母体への負担」と「予防原則」にあることを解説しました。しかし、すべての施術が一律に禁止されているわけではありません。医師の判断のもと、条件付きで検討できる選択肢も存在します。

妊娠中はホルモンバランスの変化により、ニキビや色素沈着、肌のくすみといったトラブルが起こりやすくなります。こうした悩みに対して、クリニックで受けられる施術にはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、妊娠中でも相談可能とされる代表的な施術について、その特徴と注意点を整理します。

この章のポイント
・低刺激ピーリングは一部クリニックで対応可能
・イオン導入は痛みがなく負担が少ない
・いずれの施術も医師への事前相談が必須

条件付きで検討できる「マイルドピーリング」

妊娠中はホルモンバランスの変化により、肌のターンオーバー(新陳代謝のサイクル)が乱れやすくなります。その結果、古い角質が表面に蓄積し、くすみやざらつき、毛穴の詰まりを感じる方も少なくありません。

こうした状態に対して、刺激の少ない薬剤を用いた「マイルドピーリング」が選択肢となる場合があります。ただし、ピーリングと一口にいっても、使用する薬剤の種類や濃度によって皮膚への影響は大きく異なります。

妊娠中に検討されることがある薬剤

妊娠中のピーリングで比較的安全性が高いとされるのは、乳酸(ラクティックアシッド)やグリコール酸といったアルファヒドロキシ酸(AHA)を用いた低濃度のピーリングです。

これらの薬剤は、皮膚の最外層である角質層に作用し、深部への浸透が少ないことが特徴です。角質層には血管が存在しないため、理論上、全身への吸収量はごくわずかに抑えられます。実際に、妊娠中のニキビに対して乳酸ピーリングが使用され、胎児への悪影響が報告されなかったという臨床報告もあります(LearnSkin)。

一方、避けるべきピーリング薬剤も存在します。

  • サリチル酸(高濃度):アスピリンの類縁物質であり、広範囲への使用で吸収率が上昇する可能性がある
  • トリクロロ酢酸(TCA):中〜深層まで浸透するため、妊娠中は回避が推奨される
  • レチノイド系ピーリング:前章で解説したとおり、予防原則により使用を避ける

ピーリングを受ける前に確認すべきこと

重要な点として、多くのクリニックでは妊娠中のピーリングを禁忌として扱っていることを認識しておく必要があります。その理由は、妊娠中の肌がホルモン変動により通常時より敏感になっており、施術後に予測しにくい反応(赤み、炎症、色素沈着など)を起こすリスクがあるためです。

また、妊娠中は「炎症後色素沈着」のリスクが高まることも考慮されます。通常であれば数日で収まる程度の赤みでも、妊娠中はそのまま色素沈着として残ってしまう可能性があります。

したがって、「施術可能」と一概に言い切ることはできません。ピーリングを希望する場合は、必ず事前に医師へ相談し、妊娠週数や肌の状態を考慮した上で判断を仰ぐことが大切です。施術を受ける場合でも、低濃度の薬剤を限定的な範囲に使用するなど、リスクを最小化する方法が選択されることが一般的です。

低侵襲な「イオン導入」という選択肢

ピーリングと並んで、妊娠中でも相談可能とされる施術の一つが「イオン導入」です。イオン導入は、微弱な電流を用いて美容成分を肌の奥まで届ける施術であり、注射のような侵襲性がなく、痛みもほとんどないことが特徴です。

イオン導入が妊婦に適している理由

イオン導入が妊娠中の方にとって相対的に適した選択肢とされる理由は、主に以下の点にあります。

  • 痛みがない:施術中に痛みを感じることがほとんどないため、痛みによるストレス(子宮収縮のリスク要因)を回避できる
  • 侵襲性が低い:皮膚を傷つけずに成分を浸透させるため、炎症後色素沈着のリスクが低い
  • 施術時間が短い:15〜30分程度で完了するため、長時間の仰向け姿勢を避けられる
  • 成分を選択できる:妊娠中でも比較的安全とされる成分を選んで導入できる

特に、ビタミンC誘導体のイオン導入は、妊娠中でも使用可能とされる成分を補給できる点がメリットです。ビタミンCには抗酸化作用があり、色素沈着の予防やコラーゲン生成のサポートが期待できます。

導入成分の安全性確認が重要

ただし、イオン導入で使用するすべての成分が妊娠中に安全というわけではありません。導入する成分については、個別に安全性を確認する必要があります。

たとえば、トラネキサム酸のイオン導入については注意が必要です。トラネキサム酸は美白目的で広く使用される成分であり、内服よりもイオン導入のほうが吸収量は少ないと考えられます。しかし、長期継続的な使用については十分なデータがないため、スポット的な使用にとどめることが推奨されます。

また、クリニックによっては複数の成分を組み合わせた「カクテル導入」を行う場合があります。この場合、すべての成分について妊娠中の安全性を確認することが重要です。施術前のカウンセリングで、使用予定の成分リストを提示してもらい、不安な成分があれば除外してもらうよう依頼することをお勧めします。

イオン導入では、成分をイオン化して電気的な力で肌に浸透させます。通常の塗布と比較して浸透効率が高まりますが、その分、導入する成分の安全性確認がより重要になります。

施術を受ける前に確認したいポイント

マイルドピーリングやイオン導入を検討する場合、事前に確認しておくべきポイントがあります。以下のチェックリストを参考に、カウンセリング時に質問してみてください。

  • 妊娠中の施術に対応した実績があるか
  • 使用する薬剤・成分の具体的な名称と濃度
  • 施術時間の目安(30分以内が望ましい)
  • 施術中の体勢(横向きやリクライニング対応の可否)
  • 万が一の肌トラブル時の対応体制
  • 施術後に避けるべきこと(日光曝露など)

これらの質問に対して明確に回答してくれるクリニックであれば、妊娠中の施術についても十分な知識と経験を持っていると判断できるでしょう。逆に、質問に対して曖昧な回答しか得られない場合は、別のクリニックを検討することも選択肢の一つです。

 

【ホームケア】自宅で取り入れたい「置き換え」成分

前章では、クリニックで受けられる施術について解説しました。しかし、妊娠中は体調の変化や通院の負担もあり、クリニックに足を運ぶことが難しい時期もあるでしょう。そうした状況において、自宅でのスキンケアが果たす役割は大きくなります。

妊娠を機にレチノールやハイドロキノンといった成分の使用を中断した方も多いのではないでしょうか。これらの成分は美肌効果が高い反面、妊娠中は予防原則により使用を避けることが推奨されています。しかし、代わりとなる成分を知らないまま「何も使わない」状態が続くと、妊娠中のホルモン変動による肌トラブルに対処できず、産後に悪化した状態からケアを再開することになりかねません。

この章では、妊娠中に避けるべき成分の代わりとして検討できる「置き換え」成分について、その効果と注意点を整理します。適切な成分選びにより、妊娠中でも無理なく肌を健やかに保つことが可能です。

この章のポイント
・バクチオールは「安全確定」ではなく要注意
・アゼライン酸はガイドラインで妊娠中使用可
・成分選びは自己判断せず医師に相談を

レチノールの代替候補「バクチオール」の可能性と限界

妊娠中にレチノールの使用を中断した方の間で、「バクチオール」という成分が注目を集めています。SNSや美容メディアでは「植物由来のレチノール代替成分」「妊娠中も安心して使える」といった情報が見られることもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

バクチオールとは何か

バクチオールは、マメ科の植物「オランダビユ(Psoralea corylifolia)」の種子から抽出される天然由来成分です。インドや中国では伝統医学において古くから使用されてきた植物ですが、スキンケア成分として注目されるようになったのは比較的最近のことです。

バクチオールが「植物性レチノール」と呼ばれる理由は、レチノールと似た遺伝子発現パターンを示すことが研究で確認されているためです。具体的には、コラーゲンの産生促進、細胞のターンオーバー促進、抗酸化作用といった効果が報告されています。

2019年に発表された比較試験(British Journal of Dermatology)では、0.5%バクチオールと0.5%レチノールを12週間使用した結果、シワや色素沈着の改善効果に大きな差がなかったと報告されています。さらに、バクチオール群ではレチノール群と比較して、ヒリヒリ感や乾燥といった刺激症状が少なかったことも確認されました。

こうした研究結果から、バクチオールはレチノールの効果を維持しながら刺激を軽減できる成分として期待されています。

妊娠中の安全性に関する重要な注意点

しかし、ここで強調しておかなければならないのは、バクチオールの妊娠中における安全性は「確定していない」という事実です。

一部の美容メディアやブランドでは「妊娠中も100%安全」といった表現が見られますが、これは科学的根拠に基づいた主張ではありません。実際の状況を正確に理解するために、以下の点を押さえておく必要があります。

  • 妊婦を対象とした臨床試験データは存在しない
  • FDA(米国食品医薬品局)等の公的機関から「妊娠中に安全」との公式推奨は出ていない
  • 主要サプライヤーであるSytheon社も「妊娠中の安全性を保証するものではない」と明記している
  • スキンケア成分としての使用歴が浅く、長期的な影響に関するデータが不足している

バクチオールがレチノイドと異なる分子構造を持ち、レチノイド受容体(RAR-β、RAR-γ)を活性化しないことから、理論上は催奇形性のリスクは低いと考えられています。しかし、「理論上リスクが低い」ことと「安全性が確認された」ことは異なります。

前章で解説した「予防原則」の考え方に基づけば、妊婦を対象とした安全性データがない成分については、慎重な判断が求められます。

バクチオールを使用する場合の考え方

以上を踏まえると、バクチオールは「レチノールよりリスクが低い可能性がある代替候補」という位置づけに留めるのが適切です。「植物由来だから安全」「レチノールではないから問題ない」という単純な図式は成り立ちません。

バクチオールの使用を検討する場合は、以下の点を考慮してください。

  • 使用前に必ず医師(産婦人科医または皮膚科医)に相談する
  • 妊娠初期(器官形成期)は特に慎重に判断する
  • 広範囲への使用は避け、気になる部分のみに限定する
  • 異常を感じた場合はすぐに使用を中止する

なお、妊娠中のスキンケアにおいて「絶対に何か代替品を使わなければならない」というわけではありません。レチノールを休止している期間は、後述するアゼライン酸やビタミンC誘導体など、より安全性データが充実した成分を選択するという判断も合理的です。

ニキビ・赤みケアに「アゼライン酸」という選択肢

バクチオールの安全性に不確実性がある一方で、妊娠中も使用可能と明記されている成分も存在します。その代表格が「アゼライン酸」です。

アゼライン酸の特徴と作用機序

アゼライン酸は、小麦やライ麦などの穀類に含まれる飽和ジカルボン酸の一種です。自然界に存在する成分であり、私たちは日常的に食事からもアゼライン酸を摂取しています。

海外では30年以上前からニキビや酒さ(赤ら顔)の治療薬として使用されてきた実績があり、その作用機序は多面的です。

  • 抗菌作用:ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を抑制する
  • 抗炎症作用:赤みや腫れを軽減し、炎症を鎮める
  • 角化正常化作用:毛穴の詰まりの原因となる角質の異常な蓄積を防ぐ
  • 美白作用:メラニンの生成を抑制し、色素沈着を予防する
  • 皮脂分泌抑制作用:過剰な皮脂の分泌を抑える

このように、アゼライン酸は一つの成分で複数の肌悩みにアプローチできる点が特徴です。ニキビ、酒さ、肝斑(かんぱん)、炎症後色素沈着など、妊娠中に起こりやすい肌トラブルの多くに対応できる可能性があります。

妊娠中の使用が認められている根拠

アゼライン酸が妊娠中も使用可能とされる最大の根拠は、催奇形性試験で陰性が確認されていることです。動物実験において、胎児への奇形誘発作用は認められていません。

日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」においても、アゼライン酸は妊娠中の使用が可能な成分として記載されています。同ガイドラインでは、アゼライン酸外用は推奨度C1(安全性が確認されており、試してみる価値がある治療法)と評価されています。

また、米国産科婦人科学会(ACOG)も、妊娠中のニキビ治療における選択肢の一つとしてアゼライン酸を挙げています。海外のガイドラインでは、妊娠中に使用を避けるべきアダパレン(ディフェリン)や過酸化ベンゾイルの代替として、アゼライン酸が推奨されるケースもあります。

さらに、アゼライン酸を皮膚に塗布しても、血中への移行量はごくわずかであることが確認されています。その量は、日常の食事から摂取するアゼライン酸の量の範囲内に収まるとされており、全身への影響は極めて限定的と考えられています。

使用上の注意点と期待できる効果

アゼライン酸は比較的安全性の高い成分ですが、使用にあたってはいくつかの注意点があります。

  • 効果発現までの期間:目に見える効果を実感するまでに2〜3ヶ月程度かかることが多い
  • 初期の刺激感:使い始めの1〜2週間は、塗布部位に軽いピリピリ感や赤みを感じることがある(多くの場合、継続使用により軽減する)
  • 濃度の選択:効果を期待するには15〜20%程度の濃度が必要とされる
  • 入手方法:日本ではアゼライン酸は医薬品として未承認のため、クリニック専売品(ドクターズコスメ)として入手するのが一般的

なお、アゼライン酸はニキビや色素沈着を「治す」成分というよりも、「肌を健やかに保つ」「肌荒れを防ぐ」サポートをする成分として位置づけられます。過度な期待を持たず、継続的なケアの一環として取り入れることが大切です。

※出典:日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」

その他の妊娠中に使いやすい成分

アゼライン酸以外にも、妊娠中のスキンケアに取り入れやすい成分があります。ここでは、比較的安全性データが充実している成分を紹介します。

ビタミンC誘導体

ビタミンC(アスコルビン酸)およびその誘導体は、妊娠中も安全に使用できる成分として広く認められています。抗酸化作用、美白作用、コラーゲン生成促進作用があり、色素沈着の予防や肌のハリ維持に効果が期待できます。

ビタミンCは水溶性であり、経皮吸収量も限られているため、全身への影響は極めて低いと考えられています。妊娠中のスキンケアにおいて、レチノールの代わりに取り入れる成分として適した選択肢の一つです。

ナイアシンアミド(ビタミンB3)

ナイアシンアミドは、肌のバリア機能を強化し、セラミドの産生を促進する作用があります。また、メラニンの生成を抑制する効果も報告されており、妊娠中に起こりやすい色素沈着の予防に役立つ可能性があります。

刺激が少なく、敏感肌の方でも使いやすい成分です。妊娠中の使用に関する安全性も確認されており、積極的に取り入れることができます。

成分選びの基本的な考え方

妊娠中のスキンケア成分を選ぶ際は、以下の優先順位で考えることをお勧めします。

優先度 成分の特徴 具体例
妊娠中の安全性データあり アゼライン酸、ビタミンC、ナイアシンアミド
安全性データ不足だが理論上リスク低 バクチオール(要医師相談)
予防原則で回避推奨 レチノール、ハイドロキノン
絶対禁忌 イソトレチノイン(内服)

妊娠中は「積極的に攻める」スキンケアよりも、「守る」スキンケアを意識することが大切です。肌トラブルを悪化させないこと、肌のバリア機能を維持すること、そして産後にスムーズにケアを再開できる状態を保つことを目標にしてみてください。

 

まとめ

妊娠中に美容施術が制限される背景には、胎児への直接的な影響だけでなく、母体へのストレス負担や「予防原則」という医学的な考え方が深く関わっています。本記事で解説したとおり、すべての施術や成分が一律に危険というわけではなく、アゼライン酸のように妊娠中も使用可能とガイドラインに明記されている成分がある一方、イソトレチノインのように絶対禁忌とされるものもあります。

また、バクチオールのように「安全性が確定していない」成分については、期待される効果と情報の限界を理解した上で、慎重に判断することが求められます。

妊娠中の肌トラブルの多くは、ホルモンバランスの変化によるものであり、出産後に自然と改善するケースも少なくありません。乾燥が気になる秋冬や、紫外線が強まる春夏、湿度変化の激しい梅雨時期など、季節ごとに肌の状態は変化しますが、妊娠中はそうした季節要因に加えて、体内の変化という根本的な要因が重なっています。

この時期は「積極的に治す」ことよりも、「悪化させない」「肌を健やかに保つ」ことを優先し、出産後に本格的なケアを再開するという長期的な視点を持つことも一つの選択肢です。

判断に迷う場合は、自己判断で成分や施術を選ぶのではなく、専門医に相談することを強くお勧めします。妊娠中の施術に対応した経験のある美容皮膚科であれば、妊娠週数や肌の状態、既往歴などを踏まえた個別のアドバイスが得られます。

結婚式や記念撮影、帰省や旅行といったイベントを控えている場合でも、無理に施術を急ぐのではなく、まずは専門家に相談し、安全性を確認した上で最適な方法を選んでいただければと思います。

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