鏡を見るたびに気になる、おでこの横ジワ。眉を上げた時だけでなく、無表情の状態でも深く刻まれた溝が目立つようになると、「ボトックスで治るのだろうか」「ヒアルロン酸の方が良いのだろうか」と迷う方は少なくありません。
新年度のスタートや転職、結婚式や同窓会といった人生の節目では、写真に残る機会も増えます。年末年始の帰省や大型連休前になると、久しぶりに会う人の視線が気になり、「このシワ、なんとかならないだろうか」と美容医療を検討し始める方もいらっしゃるでしょう。季節の変わり目に鏡をじっくり見て、ふと自分の変化に気づくこともあるかもしれません。
おでこのシワ治療では、ボトックスとヒアルロン酸のどちらを選ぶべきか、あるいは併用すべきかという判断が重要になります。この選択を誤ると、期待した効果が得られないばかりか、「目が開けづらくなった」といった予期せぬ結果を招くこともあります。
ここでは、おでこのシワが生じるメカニズムから、ボトックスとヒアルロン酸それぞれの適応、知っておくべきリスク、そしてクリニック選びのポイントまでを解説します。ご自身のシワのタイプを理解し、納得のいく治療選択をするための参考にしていただければ幸いです。

国立琉球大学医学部医学科を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2024年アラジン美容クリニックに入職。
特にクマ取り治療では、年間症例数3,000件以上を誇るスペシャリストである。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様の悩みに真剣に向き合う。
おでこのシワにヒアルロン酸は効く?ボトックスとの違いと適応診断
おでこのシワ治療を検討する際、まず理解しておきたいのが「シワのタイプによって適した治療法が異なる」という点です。ボトックスとヒアルロン酸は、どちらもシワ治療に用いられますが、作用するメカニズムは全く異なります。
ボトックスは筋肉の動きを抑制することでシワを目立たなくさせ、ヒアルロン酸は皮膚の下にボリュームを加えることでシワを改善します。どちらが優れているという話ではなく、シワの状態によって適した選択肢が変わってくるのです。
この章では、おでこのシワを「表情ジワ」と「静的シワ」の2タイプに分類し、それぞれに適した治療法を解説します。また、ボトックス注入を検討する際に知っておくべき「代償性眉挙上」という概念についても説明します。
この章のポイント
・表情ジワにはボトックスが第一選択
・静的シワにはヒアルロン酸が有効
・代償性眉挙上がある場合は慎重な判断が必要
「表情ジワ」と「静的シワ」の違い
おでこのシワは、その成り立ちによって大きく2種類に分けられます。「表情ジワ(動的シワ)」と「静的シワ」です。この区別を理解することが、適切な治療選択の出発点となるでしょう。
表情ジワ(動的シワ)とは
表情ジワは、眉を上げたり驚いた表情をしたりといった、表情の動きに伴って現れるシワです。おでこの場合、前頭筋という薄い筋肉が収縮することで、その上の皮膚が折りたたまれ、横方向のシワが生じます。
表情ジワの特徴は、表情を元に戻せばシワも消えるという点です。鏡の前で眉を上げてシワを作り、力を抜いてみてください。シワが完全に消える、あるいはほとんど目立たなくなるのであれば、それは表情ジワである可能性が高いといえます。
表情ジワに対しては、一般的にボトックス注入が第一選択となります。ボトックスは筋肉と神経の接合部に作用し、筋肉の収縮を一時的に抑制する効果があるとされています。前頭筋の動きが穏やかになることで、皮膚が折りたたまれる回数と程度が減り、シワが目立たなくなるという仕組みです。
静的シワとは
静的シワは、表情を動かしていない状態でも常に刻まれているシワです。長年にわたって同じ場所で皮膚が繰り返し折りたたまれた結果、いわば「折り癖」がついてしまった状態といえるでしょう。
加齢に伴うコラーゲンやエラスチンの減少により皮膚の弾力が低下することも、静的シワの形成に関与していると考えられています。また、紫外線によるダメージの蓄積も、静的シワを深くする要因の一つとされています。
静的シワに対しては、ボトックスだけでは十分な効果が得られないことがあります。折り癖がついた紙を想像してみてください。紙を折る動作(筋肉の収縮)を止めたとしても、すでについてしまった折り目(静的シワ)は消えません。この折り目を目立たなくするには、下から押し上げて支える、つまりヒアルロン酸によるボリューム補填が有効となる場合があります。
シワのタイプと治療法の対応
それぞれのシワタイプと、適した治療法の関係を整理します。
| 項目 | ボトックス | ヒアルロン酸 |
|---|---|---|
| 主な適応 | 表情ジワ(動的シワ) | 静的シワ・ボリュームロス |
| 作用メカニズム | 筋肉の動きを抑制 | 溝を埋める・土台を支える |
| 効果発現 | 3〜7日後から徐々に | 施術直後から実感しやすい |
| 持続期間 | 3〜6ヶ月程度 | 6〜18ヶ月程度 |
| 可逆性 | 時間経過で自然に戻る | ヒアルロニダーゼで溶解可能 |
実際の臨床では、表情ジワと静的シワの両方の特徴を併せ持つケースが少なくないようです。眉を上げたときに深いシワが現れ、表情を戻しても薄くシワの跡が残っている、このような場合には、ボトックスとヒアルロン酸の併用療法が検討されることがあります。
ボトックスで筋肉の過剰な動きを抑えつつ、ヒアルロン酸で残存する溝を埋めることで、より自然で持続的な改善が期待できるでしょう。
ボトックスを慎重に検討すべき「代償性眉挙上」とは
おでこへのボトックス注入を検討する際、もう一つ理解しておくべき概念があります。それが「代償性眉挙上(だいしょうせいびきょじょう)」です。この状態を見落としたままボトックスを注入すると、予期しない結果を招く可能性があります。
代償性眉挙上のメカニズム
代償性眉挙上とは、まぶたにたるみがある方が、視界を確保するために無意識のうちにおでこの筋肉(前頭筋)を使って眉を持ち上げている状態を指します。本人は意識していないことがほとんどですが、前頭筋を常に緊張させることで眉の位置を高く保ち、たるんだまぶたが視界を遮るのを防いでいるのです。
この状態でおでこにボトックスを注入するとどうなるでしょうか。ボトックスによって前頭筋の動きが抑制されると、眉を持ち上げる力が弱まります。その結果、眉の位置が下がり、もともとあったまぶたのたるみがより顕著になることがあります。
患者さんからは「目が開けづらくなった」「まぶたが重く感じる」「視界が狭くなった」といった訴えが聞かれることがあるようです。これは施術の失敗というよりも、代償性眉挙上を見落としたまま施術を行った結果といえるかもしれません。
セルフチェックの方法
代償性眉挙上があるかどうかは、簡単なセルフチェックである程度の目安をつけることができます。
鏡の前で、手のひらでおでこ全体を押さえ、眉が動かないように固定してください。その状態で普通に目を開けてみます。このとき「目が開けにくい」「まぶたが重い」「視界が狭く感じる」といった違和感がある場合は、普段から前頭筋を使って眉を持ち上げている可能性があるでしょう。
ただし、これはあくまで目安であり、正確な診断は医師による診察が必要です。カウンセリング時に「このチェックで違和感があった」と伝えることで、医師も注意深く評価してくれるはずです。
代償性眉挙上がある場合の治療選択
代償性眉挙上が疑われる場合、おでこのシワ治療にはいくつかの選択肢が考えられます。
一つ目は、ボトックスの注入量や注入部位を調整する方法です。前頭筋全体ではなく上部に限定して少量を注入することで、眉の挙上機能をある程度残しながらシワを軽減できる場合があるとされています。
二つ目は、ボトックスを使用せずヒアルロン酸単独で治療する方法です。筋肉の動きには影響を与えずに、シワの溝を埋めることができます。代償性眉挙上がある方にとっては、より安全な選択肢となる可能性があります。
三つ目は、まぶたのたるみ自体に対処する方法です。眉下切開や上眼瞼形成術などでたるみを改善することで、代償性眉挙上の必要性がなくなり、その後ボトックス治療が可能になることもあるでしょう。
いずれにしても、代償性眉挙上の有無はカウンセリング時に必ず確認してもらうべきポイントです。経験のある医師であれば、診察の段階でこの状態を見抜き、適切な治療計画を提案してくれるでしょう。
おでこの深いシワにヒアルロン酸が選ばれる理由|骨格と皮膚の関係
前章では、シワのタイプによって適した治療法が異なることを解説しました。表情ジワにはボトックス、静的シワにはヒアルロン酸が有効であるという基本的な考え方です。
では、なぜヒアルロン酸が深いシワに効果を発揮するのでしょうか。その理由を理解するためには、シワの原因を「皮膚」だけでなく「骨格」という視点から捉え直す必要があります。
実は、加齢に伴うシワやたるみの原因は、皮膚の老化だけではありません。その下にある骨格自体も、年齢とともに変化しているのです。この章では、おでこのシワと骨格変化の関係を解剖学的な視点から解説し、ヒアルロン酸がどのようなメカニズムで深いシワを改善するのかを説明します。
この章のポイント
・加齢で前頭骨の丸みが失われ、皮膚が余る
・ヒアルロン酸は土台から皮膚を支え直す
・額形成でシワ改善と丸みの回復を同時に目指せる
シワの原因は「皮膚」だけではない?骨格の加齢変化という視点
「シワは皮膚の老化によってできる」これは間違いではありませんが、完全な説明でもないようです。近年の解剖学的研究により、顔の骨格が加齢とともに変化し、それがシワやたるみの形成に関与していることが明らかになってきました。
顔の骨格は加齢とともに変化する
顔の骨格は、一般的にイメージされているような「不変のもの」ではありません。骨は常に吸収と形成を繰り返しており、加齢に伴ってその形状は少しずつ変化していきます。
特に顔面骨では、眼窩(目の周りの骨)の拡大、頬骨の後退、下顎骨の萎縮などが起こることが知られています。こうした変化は、顔全体のボリューム感や輪郭に影響を与え、たるみやシワの原因となっている可能性があります。
前頭骨に起こる「形状の変化」
おでこの骨である前頭骨も例外ではありません。2021年に発表された解剖学的研究によると、前頭骨は加齢に伴って「凸型の形状が平坦化する」傾向があることが報告されています。つまり、若い頃にあった滑らかな丸みが、徐々に失われていく可能性があるのです。
この変化を理解するために、「テント」を思い浮かべてみてください。テントの支柱(骨格)がしっかりと高さを保っているとき、張られた布(皮膚)はピンと張った状態を維持できます。しかし、支柱が低くなったり形が変わったりすると、布は余ってたわみ、シワが生じます。
おでこで起きているのも、本質的にはこれと同じ現象かもしれません。前頭骨の丸みが失われると、その上を覆っている皮膚は相対的に「余る」ことになります。
骨格変化がシワに与える影響
余った皮膚は重力に従って下方に移動しようとしますが、眉毛や眼窩縁といった構造物に阻まれるため、その場で折りたたまれてシワとなる可能性があります。また、骨格という土台のサポートが弱まることで、皮膚のハリ感も失われ、全体的に疲れた印象を与えやすくなることがあるでしょう。
つまり、深いおでこのシワの原因は、単なる「皮膚の折り癖」だけでなく、「土台となる骨格のボリュームロス」も関係しているケースがあると考えられています。
ヒアルロン酸による「土台からのアプローチ」
骨格の変化がシワの原因の一つであるならば、治療のアプローチも変わってきます。皮膚表面だけをケアするのではなく、失われた土台のボリュームを補うことで、皮膚を内側から支え直すという考え方です。
シワを「埋める」のではなく「支える」
ヒアルロン酸注入は、この「土台からのアプローチ」を可能にする治療法といえます。シワの溝を直接「埋める」だけでなく、骨膜の上にヒアルロン酸を注入することで、失われた骨格のボリュームを補い、皮膚を内側から「支える」ことができるのです。
骨膜上への注入によって土台のボリュームが補われると、その上の皮膚は内側から持ち上げられ、張りを取り戻すことが期待できます。結果として、シワが目立たなくなるだけでなく、おでこ全体がふっくらとした印象になる可能性があるでしょう。
注入層による効果の違い
ヒアルロン酸の注入層は、治療目的によって使い分けられます。おでこへの注入で用いられる主な注入層と、その特徴を整理します。
| 注入層 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| 真皮内 | 浅く細かいシワの改善 | 表面に近いため凹凸が目立ちやすい |
| 皮下 | 中程度のシワ・軽度のボリューム補填 | 汎用的だがフィラーが移動するリスクあり |
| 骨膜上 | 深いシワ・額形成 | 安定性が高く、血管リスクも相対的に低い |
おでこの深いシワや、後述する「額形成」を目的とする場合は、最も深い層である骨膜上への注入が主流となっているようです。骨膜上は血管が比較的少ない層であり、また骨という硬い組織の上に注入するため、フィラーが安定しやすく移動しにくいというメリットがあるとされています。
さらに、血管が多く走行する浅い層を避けることで、血管塞栓のリスクを相対的に低減できるとも考えられています。
ボトックスとの併用という選択肢
前章で触れたボトックスとの併用は、この土台アプローチと組み合わせることでさらに効果的となる場合があります。
ヒアルロン酸で土台を支え直し、ボトックスで筋肉の過剰な動きを抑制する、この二方向からのアプローチにより、シワの改善効果を高め、その持続期間を延ばすことが期待できるかもしれません。ただし、併用が適しているかどうかは個人のシワの状態によって異なるため、医師との相談が必要です。
額に丸みを出す「額形成」という考え方
近年、美容医療の分野で注目されているのが「額形成」という治療コンセプトです。これは、単にシワを改善するだけでなく、額全体の形状を整えることで、より調和のとれた顔立ちを目指すアプローチといえます。
額形成とは
額形成では、ヒアルロン酸を用いて、眉上から生え際にかけて滑らかな曲線(カーブ)を形成します。もともと額が平坦な方や、加齢によって丸みが失われた方に対し、立体的で柔らかい印象の額のラインを作り出すことを目的としています。
額形成によって期待できる変化としては、まず額の丸みが回復することで横顔の印象が柔らかくなることが挙げられます。また、額に適度なボリュームが加わることで、相対的に眉や目元の印象が引き締まり、顔全体のバランスが整うこともあるでしょう。そして、額の凹凸が滑らかになることで、シワも目立ちにくくなる可能性があります。
額形成の注意点
ただし、額形成にはいくつかの注意点もあります。
まず、シワ改善のみを目的とする場合と比較して、注入量が多くなる傾向があります。そのため、費用も相応に高くなることが一般的です。
また、額の形状は顔全体の印象に影響を与えるため、医師の美的センスと技術が仕上がりを左右します。「どのようなカーブが自然で美しいか」は個人の骨格や顔立ちによって異なるため、画一的な正解はありません。
カウンセリングでは、シンプルな「シワ改善」を目指すのか、「額形成」まで視野に入れるのか、希望を明確に伝えることが重要でしょう。医師と相談しながら、現実的に期待できる効果と、必要な注入量・費用のバランスを検討してみてください。
おでこへのヒアルロン酸|知っておくべきリスクとクリニックの選び方
ここまで、ヒアルロン酸がおでこの深いシワ治療に有効である理由を解説してきました。しかし、どのような医療行為にもリスクは存在します。特におでこは、顔の中でも慎重な施術が求められる部位の一つです。
ヒアルロン酸注入は比較的安全性の高い施術として広く普及していますが、「安全」と「リスクがない」は同義ではありません。稀ではあるものの、重篤な合併症が報告されていることも事実です。
この章では、おでこへのヒアルロン酸注入で知っておくべきリスクと、それを低減するための技術的ポイント、そしてクリニック選びの具体的な判断基準について解説します。リスクを正しく理解し、それを低減する体制を備えたクリニックを選ぶことが、満足のいく結果を得るための前提条件となるでしょう。
この章のポイント
・額は血管塞栓リスクがある部位である
・カニューレ使用・骨膜上注入がリスク低減に有効
・緊急対応体制のあるクリニックを選ぶ
知っておくべきリスク|血管塞栓と皮膚壊死
おでこへのヒアルロン酸注入で最も注意すべき合併症は、「血管塞栓(けっかんそくせん)」です。これは、注入したフィラーが血管内に入り込み、血流を阻害してしまう状態を指します。
血管塞栓が起こる仕組み
血管塞栓は、注射針やカニューレが血管壁を貫通し、血管内にフィラーが注入されることで発生します。特に問題となるのが「逆行性塞栓」と呼ばれる現象です。
通常、動脈の血液は心臓から末梢に向かって流れています。しかし、注入時の圧力が動脈の血圧を上回ると、フィラーが血流に逆らって中枢側(心臓や脳に近い方向)に押し戻されることがあるとされています。
おでこの血管は眼動脈(目に血液を送る動脈)と繋がっているため、逆行性にフィラーが移動すると、最悪の場合、網膜中心動脈を閉塞させ、視力障害や失明を引き起こす可能性があります。
おでこの血管解剖|滑車上動脈と眼窩上動脈
おでこには、「滑車上動脈(かっしゃじょうどうみゃく)」と「眼窩上動脈(がんかじょうどうみゃく)」という2本の動脈が走行しています。これらはいずれも眼動脈から分岐しており、目への血流と直接的な繋がりを持っています。
滑車上動脈は、眼窩の上内側から出て、眉頭の内側付近を通り、おでこの中央寄りを上行します。眼窩上動脈は、眼窩上切痕から出て、眉の中央付近を通り、おでこの外側寄りを上行します。
これらの動脈は、眼窩縁(目の周りの骨の縁)から約1.5〜2.0cm上方までは前頭筋の下(深い層)を走行し、その後、筋肉を貫通してより浅い層(皮下)に移行するとされています。この「深層から浅層への移行帯」は、注入時に特に注意が必要な領域といえるでしょう。
血管塞栓の発生頻度
血管塞栓は稀な合併症ですが、発生した場合の影響は深刻です。世界の文献をレビューした研究(Beleznay et al.)によると、フィラー注入による視力障害の報告例では、注入部位別の内訳は以下のようになっています。
| 注入部位 | 視力障害報告の割合 |
|---|---|
| 眉間(グラベラ) | 約39% |
| 鼻 | 約26% |
| 鼻唇溝 | 約13% |
| 額(おでこ) | 約12% |
※報告例の集計であり、実際の発生率を示すものではありません。
おでこは4番目に多い部位であり、眉間や鼻と比較すると報告数は少ないものの、決して無視できるリスクではないでしょう。眉間とおでこは解剖学的に近接しており、同じ血管系が関与しているため、同様の注意が必要と考えられています。
血管塞栓以外のリスク
血管塞栓以外にも、以下のようなリスクが報告されています。
比較的頻度の高い副作用としては、腫れ、赤み、内出血、注入部位の痛みや違和感、左右差や凹凸などがあります。これらは多くの場合一時的なものであり、1〜2週間程度で改善することが一般的です。
稀ではあるものの注意が必要な合併症としては、皮膚壊死(血流障害による)、感染、肉芽腫(異物反応による硬結)、フィラーの移動などが挙げられます。
施術後に皮膚の色が白っぽくなる(蒼白化)、強い痛みが持続する、視力に異常を感じるといった症状が現れた場合は、血管塞栓の可能性があるため、直ちに医療機関に連絡する必要があります。
リスクを低減するための技術的ポイント
血管塞栓のリスクをゼロにすることはできませんが、適切な技術と知識によって大幅に低減することは可能とされています。経験のある医師は、以下のような技術的配慮を行っていることが多いようです。
カニューレ(鈍針)の使用
通常の注射針(シャープニードル)は先端が鋭く、血管壁を容易に貫通する可能性があります。一方、カニューレは先端が丸く(鈍く)なっており、血管に当たっても壁を貫通しにくい構造になっています。
専門家のコンセンサスでは、おでこへのヒアルロン酸注入には少なくとも25G(ゲージ)以上のカニューレを使用することが推奨されているようです。カニューレを使用することで、血管穿刺のリスクを完全に排除できるわけではありませんが、鋭針と比較してリスクを低減できると考えられています。
ただし、カニューレの使用にはデメリットもあります。鋭針と比較して細かいコントロールが難しい、挿入口を作るために別途針を刺す必要があるなどの点です。注入部位や目的によっては、あえて鋭針を選択する医師もいるでしょう。
注入層の選択|骨膜上への注入
前章でも触れましたが、ヒアルロン酸の注入層は安全性にも影響します。おでこの血管(滑車上動脈、眼窩上動脈)は、眼窩縁から約1.5〜2.0cm上方までは深い層を走行し、その後より浅い層に移行するとされています。
この解剖学的特徴を踏まえると、おでこへの注入は骨膜上(最も深い層)を基本とすることで、血管が走行する浅い層を避けられる可能性があります。専門家のコンセンサス論文でも、おでこへの注入は骨膜上への注入が推奨されているようです。
骨膜上は血管が比較的少なく、また注入したフィラーが移動しにくいため、安全性と効果の両面でメリットがあると考えられています。
注入量と注入速度の管理
血管塞栓のリスクは、一度に注入する量(ボーラス量)とも関係しています。一度に大量のフィラーを注入すると、万が一血管内に入った場合に、逆行性塞栓のリスクが高まる可能性があります。
このため、一度に注入するボーラス量は少量に抑え、複数回に分けて注入することが推奨されています。また、注入速度も重要です。急速に注入すると高い圧力がかかるため、ゆっくりと低圧で注入することが安全性を高めるとされています。
クリニック選びで確認したいポイント
おでこへのヒアルロン酸注入を検討する際、クリニック選びは非常に重要です。同じ施術であっても、医師の技術や経験、クリニックの体制によって、安全性と結果は大きく異なる可能性があります。
カウンセリングで確認すべき5つのポイント
以下のチェックリストを参考に、カウンセリング時に確認してみてください。
- おでこ(上顔面)への注入経験
おでこは解剖学的に特殊な部位であり、他の部位(頬、唇など)とは異なる知識と技術が求められます。おでこへの注入経験が豊富かどうか、症例数や経験年数を確認するとよいでしょう。 - 使用する器具(カニューレ vs 鋭針)
カニューレを使用しているか、鋭針を使用する場合はその理由と安全対策を確認しましょう。どちらを使用するにせよ、医師が明確な根拠を持って選択していることが重要です。 - 注入層と注入技法の説明
「どの層に、どのような方法で注入するか」を説明してもらいましょう。骨膜上への注入であること、少量ずつ分けて注入することなど、安全に配慮した技法であるかを確認します。 - 緊急対応体制
万が一血管塞栓が発生した場合の対応体制を確認しましょう。ヒアルロン酸を溶解する薬剤(ヒアルロニダーゼ)を常備しているか、緊急時の対応プロトコルがあるか、眼科との連携体制があるかなどがポイントです。 - 使用する製剤の種類
使用する製剤のブランド名、特性、持続期間などを確認しましょう。厚生労働省の承認を受けた製剤を使用しているかどうかも判断基準の一つとなるでしょう。
避けた方がよいクリニックの特徴
以下のような特徴があるクリニックは、慎重に検討した方がよいかもしれません。
「リスクはほとんどない」と断言する、カウンセリングが極端に短い(5分以下など)、質問に対して具体的な回答がない、施術を急かす・当日施術を強く勧める、価格だけを強調し技術や安全性の説明がない、使用する製剤のブランドを教えてくれない、—こうした対応が見られる場合は注意が必要でしょう。
美容医療は「サービス業」の側面もありますが、本質は「医療行為」です。リスクを正直に説明し、患者が十分に理解した上で施術を行うことは、医療者として当然の姿勢といえます。
複数のクリニックでカウンセリングを受ける
おでこへのヒアルロン酸注入は、一度受けると元に戻すのは簡単ではありません。ヒアルロニダーゼで溶解は可能ですが、完全に元通りになるとは限らないためです。
そのため、複数のクリニックでカウンセリングを受け、説明内容や提案される治療計画を比較検討することをお勧めします。クリニックによって、推奨する製剤や注入量、併用治療(ボトックスなど)の提案が異なることがあります。
また、カウンセリングを受ける中で、医師との相性も見えてくるでしょう。質問しやすい雰囲気か、説明は分かりやすいか、不安に対して丁寧に対応してくれるかなど、技術面だけでなくコミュニケーション面も判断材料となります。
まとめ
おでこのシワ治療において、ボトックスとヒアルロン酸は「どちらが優れているか」ではなく、「シワのタイプに応じて使い分ける」ものです。表情を作った時だけ現れる動的シワにはボトックス、無表情でも刻まれている静的シワや骨格の変化によるボリュームロスにはヒアルロン酸が選択肢となります。両者を併用することで、より自然な仕上がりを目指せるケースもあります。
一方で、おでこは滑車上動脈をはじめとする重要な血管が走行する部位であり、施術には相応のリスクが伴います。カニューレの使用、骨膜上への注入、緊急時の対応体制など、安全性を担保するための技術と設備を備えたクリニックを選ぶことが、満足のいく結果を得るための第一歩です。
大切なイベントを控えている方は、ダウンタイムを考慮して2週間以上前に施術を受けることをお勧めします。また、施術を急ぐ必要がない場合は、複数のクリニックでカウンセリングを受け、説明内容や提案される治療計画を比較検討することも賢明な選択です。
シワの悩みは、放置しても自然に改善することはほとんどありません。しかし、焦って判断を誤る必要もありません。まずは信頼できるクリニックで診察を受け、ご自身のシワのタイプと適切な治療法について相談してみてください。正しい知識を持った上での選択が、後悔のない結果につながります。
アラジン美容クリニック福岡院では、「ウソのない美容医療の実現」をモットーに、患者様お一人ひとりの美のお悩みに真摯に向き合い、最適な治療をご提案しております。無駄な施術を勧めることなく、症状の根本的な原因にアプローチし、患者様の理想を実現するお手伝いをいたします。
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