脂肪注入は、自分の脂肪を活用することでアレルギーのリスクを抑えつつ、ナチュラルな若返りが期待できる美容医療の一つです。特に、目の下や頬、こめかみといった年齢サインが出やすい部位に効果的とされ、近年は再生医療の一環としても注目されています。
しかし一方で、「定着しない」「しこりができた」「不自然になった」といった後悔の声や、ネガティブな口コミも散見されます。美容医療は決して安易な判断で受けるべきものではなく、慎重な情報収集が求められます。
ここでは、脂肪注入のデメリットに焦点を当てつつ、施術前に知っておくべきポイントを中立的かつ専門的に解説します。リスクとメリットを正しく理解したうえで、納得のいく選択をしていただくための参考になれば幸いです。

国立琉球大学医学部医学科を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2024年アラジン美容クリニックに入職。
特にクマ取り治療では、年間症例数3,000件以上を誇るスペシャリストである。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様の悩みに真剣に向き合う。
脂肪注入とは?その基本情報について
脂肪注入とは、年齢とともに失われる顔や体のボリュームを補う再生的美容医療のひとつです。とくに「目の下のクマ」「こけた頬」「へこんだこめかみ」など、加齢のサインが出やすい部位へのアプローチとして注目されています。
自分の脂肪を使うためアレルギーのリスクが低く、仕上がりの自然さや長期持続性も支持される理由のひとつです。ここでは、脂肪注入とはどのような施術なのか、なぜ多くの人が選ぶのか、他の治療法とどう違うのかを、最新の知見をもとに詳しく解説していきます。
脂肪注入とはどんな施術?
脂肪注入(自家脂肪移植)は、患者自身の脂肪組織を活用して顔や身体のボリュームを再構築する美容医療技術です。異物を使用せずに、身体に馴染みやすく、自然な仕上がりを目指せる点から、再生医療的な位置づけとしても注目されています。
この施術は以下の3つのステップで構成され、それぞれの工程で医師の知識・技術・審美眼が問われる、極めて繊細な施術です。
脂肪の採取(ドナー部位からの吸引)
脂肪のドナー部位としては、太もも内側・腹部・膝上・腰部など、比較的脂肪がつきやすい箇所が選ばれます。採取には直径2〜3mm程度の鈍針カニューレを用い、陰圧(マニュアルまたは機械式)で脂肪を吸引します。
重要なのは、脂肪細胞が壊れないように低圧で丁寧に吸引する技術です。高い陰圧をかけすぎると、脂肪細胞が破壊され、生着率が低下するため、熟練医師ほど丁寧かつ細やかな操作を行います。また、術後のドナー部位の凹凸や皮膚のたるみを回避するために、吸引量や部位のバランスにも細心の注意が必要です。
脂肪の精製(不純物除去と脂肪加工)
吸引した脂肪には、血液、麻酔液、脂肪以外の組織片、壊死した細胞などの不純物が含まれています。これらを除去し、生着しやすい状態の脂肪に加工する工程が「精製」です。
- 遠心分離法:3000rpmで数分間回転させて脂肪を分離。一般的な方法ですが、遠心力が強すぎると脂肪細胞を傷めるリスクもあるため、最適な回転数と時間設定が求められます。
- 濾過式フィルター法(フィルトレーション):物理的な圧力をかけず、フィルターで血液や水分を除去。細胞へのダメージが少なく、近年はこちらを採用する施設も増加傾向。
- デコントアリング処理(PureGraftなどの専用機器):一部の高性能システムでは脂肪を閉鎖系で衛生的に処理し、幹細胞や血管周囲細胞を損なわずに抽出する設計が施されています。
用途に応じて、以下のように脂肪の粒子サイズを調整することもあります。
種類 | 粒子の特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
ピュアファット | 通常の脂肪塊 | ボリューム形成(頬・こめかみなど) |
マイクロファット | 粒子を小さく砕いた脂肪 | 細かい凹みや輪郭形成(目の下・法令線など) |
ナノファット | さらに濾過・乳化し細胞成分だけ抽出 | 肌質改善目的(皮膚内層に注入) |
注入(目的部位へのデザイン形成)
精製された脂肪は、極細のカニューレを用いて、注入対象の部位にごく少量ずつ分散して注入されます。注入する部位としては主に以下が挙げられます:
- 目の下(クマやたるみ補正、涙袋形成)
- 頬部(こけた頬・中顔面の平坦化改善)
- こめかみ(輪郭の立体感補正)
- 法令線(しわの陰影軽減)
- フェイスライン・顎・額(全体的な輪郭形成)
注入時のポイントは、多層的かつマルチポイントでの分散注入です。深層(骨膜上・筋膜層)から浅層(真皮下層)まで、層を分けて丁寧に注入することで、自然な立体感を演出するとともに、脂肪の血流確保による生着率向上としこり・凹凸のリスク軽減が図れます。
また、注入後のマッサージや形成操作は最小限にとどめることが多く、基本的には注入時の精度と分布こそが結果を左右する最大要因となります。
なぜ人気なのか?自然さと定着率の理由
脂肪注入は、自分自身の組織を使うため、異物感がなく皮膚とのなじみが極めて良好です。表情の変化に自然に対応でき、周囲に気づかれにくいのが特徴です。
ヒアルロン酸は一定期間で吸収される一方で、脂肪注入は定着すれば半永久的に効果が持続します。ただし注入した脂肪の全量が残るわけではなく、生着率は平均で30~70%程度と報告されており、個人差と施術法によって大きく変わってきます。
脂肪には「脂肪由来幹細胞(ADSCs)」が豊富に含まれており、肌の弾力性向上や毛穴の改善、傷の修復促進など、肌質改善に寄与する可能性があるとされています。ただし、臨床レベルでの確立は進行中であり、「効果が期待される段階」であることを踏まえる必要があります。
脂肪注入はデメリットが多い?というのは誤解!メリットもたくさん!
前章では、脂肪注入がどのように行われる施術なのか、自然な若返り効果が期待される理由を医学的視点で解説しました。一方で、脂肪注入に対して「失敗したらどうしよう」「定着しないかも」といった不安の声も少なくありません。
実際にリスクが存在するのは事実ですが、それが即“危険な施術”ということではなく、正しい理解と準備があれば、むしろ他の注入治療と比べて多くのメリットを享受できる選択肢なのです。ここでは、脂肪注入における代表的なデメリットと、それを補って余りあるメリットを医学的根拠とともにご紹介します。
考えられるデメリットとは?|脂肪注入で注意すべきリスクと現実
脂肪注入は、ヒアルロン酸では得られない自然な質感や長期的な効果を期待できる一方で、「本当に安全なのか?」「失敗のリスクはないのか?」といった不安の声も少なくありません。
事実として、脂肪注入には定着率の個人差や、しこり、左右差などのリスクが一定の確率で存在します。これらのリスクは、施術法や医師の技術力によって大きく左右されるため、事前に正しい情報を理解しておくことが非常に重要です。
定着率には幅があり!仕上がりの個人差が出やすい
注入した脂肪のすべてが生着するわけではなく、一部は体内で吸収されてしまいます。生着率はかなり幅がある30〜70%(80%以上とするデータもあり)という幅があり、患者の体質や注入部位、医師の技術によって結果は大きく左右されます。
そのため、リタッチ(再注入)を前提とする場合も多く、施術1回で完成しないことがあるという前提で臨む必要があります。
しこり・脂肪壊死・石灰化などのリスク
脂肪がうまく分散されず、局所に偏るとしこりや硬結の原因になります。また、脂肪が十分な血流を得られないと壊死(細胞死)を起こすことがあり、場合によっては石灰化することも。
ある研究では、乳房への脂肪注入において脂肪壊死は1.2%、油嚢胞は6.5%、石灰化は4.5%で発生していると報告されています。
(参考:Complications after Breast Augmentation with Fat Grafting: A Systematic Review)
顔面の場合は皮膚が薄く構造も繊細であるため、注入の深さ・量・方法が適切でないとトラブルのリスクが増加します。
左右差や不自然なボリューム感
脂肪の注入量や注入層の設定は、施術者の経験に大きく依存します。一度に大量注入すると生着しにくいため、微量を多層に分けて注入する手法が理想ですが、技術に差が出やすく、左右非対称や不自然な膨らみが生じる可能性があります。
脂肪塞栓症や失明などの極めて稀な合併症
特に目の周囲や額への注入では、誤って脂肪が血管内に入ることで網膜動脈塞栓、視神経障害、脳梗塞などの重篤なリスクが報告されています。
これらは極めて稀なケースではありますが、施術医が顔面の血管解剖に精通していない場合に起こりやすいとされており、厚労省や各学会でも注意喚起されています。
(参考:Arterial Embolism After Facial Fat Grafting: A Systematic Literature Review)
デメリットだけじゃない!メリットも多い!その脂肪注入の優位性とは?
脂肪注入には確かにリスクもありますが、それだけで「危ない施術」と決めつけてしまうのは早計です。実際には、正しい技術と適切な判断があれば、他の注入治療では得られない大きな利点が数多く存在します。
特に、自分の組織を使うことによる自然さや安全性、そして長期的に維持できる効果は、多くの患者にとって非常に魅力的なポイントです。
自然な質感と表情のなじみの良さ
注入されるのは自分の細胞であるため、皮膚とのなじみが良く、硬さや光沢の違和感が生じにくいという特性があります。表情筋の動きにも自然に追従するため、「整形感がない仕上がり」を求める方には非常に適しています。
長期的に効果が持続
生着した脂肪は、加齢に伴う変化を受けながらも基本的には体内に残るため、数年以上の長期持続が期待されます。ヒアルロン酸のように半年〜1年で吸収されてしまう注入材と異なり、再施術の頻度が少なく済むことは、コスト的にも心理的にも大きな利点です。
アレルギーや異物反応のリスクが非常に低い
使用されるのは自家脂肪であり、異物反応やアレルギーの可能性がほぼゼロに等しい点は、他の注入剤にはない強みです。特にヒアルロン酸アレルギーの既往がある方や、異物への抵抗感が強い方には理想的な選択肢です。
幹細胞による肌質改善の可能性
脂肪組織には脂肪由来幹細胞(ADSCs)が含まれており、肌の再生能力を活性化させる可能性があると報告されています(ただし臨床エビデンスの蓄積は現在進行中)。
一部のクリニックでは、肌質改善目的でナノファットのみを浅層に注入する「スキンブースター的な応用」も導入されています。
顔の脂肪注入で注意すべき部位別リスクとは?
前章では、脂肪注入にはリスクもある一方で、自然さや安全性といった他の注入治療にはない多くのメリットがあることをお伝えしました。ただし、そのリスクは施術を受ける部位によって大きく異なるという点は、あまり知られていないかもしれません。
顔は非常に繊細な構造を持っており、部位ごとに皮膚の厚さ・血管の走行・脂肪層の深さなどが異なるため、脂肪注入の難易度や注意点もそれぞれ異なります。
ここでは、特に人気の高い「目の下」「頬」「こめかみ」などの部位を中心に、脂肪注入時に知っておくべき部位別リスクを丁寧に解説します。
目の下|クマ改善に人気ながらも繊細さゆえの高リスクゾーン
目の下の脂肪注入は、クマや凹みの改善を目的に選ばれることが多い施術です。しかし、この部位は皮膚が非常に薄く、解剖学的に複雑な構造を持つため、他の部位と比較してリスクが高いとされています。
- 皮膚が極端に薄く、構造が複雑
- しこりや硬結、脂肪壊死のリスク
- 視力障害・失明
頬・こめかみ|比較的安全だが左右差や定着ムラに注意
頬やこめかみへの脂肪注入は、中顔面のボリュームロスを自然に補えるため人気の部位です。皮膚の厚みや脂肪層がしっかりしているため、比較的リスクは低いとされますが、以下のような注意点もあります。
- 定着率のムラによる左右差
- 大量注入による過膨張感
- こめかみも塞栓リスクの報告あり
額・ほうれい線・フェイスライン|意外に知られていない注意点も
脂肪注入は、顔のボリュームを回復し、若々しい印象を与えるための人気の施術です。しかし、額・ほうれい線・フェイスラインなどの部位では、特有のリスクや注意点が存在します。
これらの部位への脂肪注入は、適切な技術と経験を持つ医師によって行われることが重要です。施術前には、リスクや期待される効果について十分な説明を受け、納得した上で施術を受けることが推奨されます。
他の注入治療とどう違う?ヒアルロン酸との比較
前章では、脂肪注入が部位ごとにどのようなリスクを持ち、どう注意すべきかを詳しく見てきました。では、それとよく比較されるヒアルロン酸とは、具体的にどこがどう違うのでしょうか。
「脂肪注入のほうが自然」「ヒアルロン酸のほうが楽」などといった印象論ではなく、それぞれの特性を、効果の持続性・副作用・ダウンタイム・施術難易度・コストといった軸から整理してみると、選択の視野がぐっと広がります。
比較項目 | 脂肪注入 | ヒアルロン酸注入 |
---|---|---|
使用素材 | 自分の脂肪 | 合成ヒアルロン酸 |
効果の持続 | 半永久的(定着した脂肪は吸収されにくい) | 約6〜18ヶ月(製剤により差あり) |
自然さ | 非常に自然。色調・質感とも周囲となじみやすい | 製剤によって自然〜やや硬さあり |
即効性 | 数日後から徐々に馴染む | ほぼ即日で効果を実感 |
ダウンタイム | 採取部位含めて1〜2週間ほど必要 | 数日以内(腫れや内出血も軽微) |
リスク | 脂肪壊死・しこり・塞栓(稀に視力障害) | チンダル現象・血管塞栓・アレルギー反応 |
修正のしやすさ | 再注入・吸引などが必要 | ヒアルロニダーゼ使用 |
コスト感 | 高め(施術工程が多く医師の技術に依存) | 比較的安価だが、定期的な施術が前提 |
どちらが優れているという話ではなく、目的によって選ぶべき施術が変わるということを理解することが重要です。
自然さ?それとも即効性?脂肪注入とヒアルロン酸を比較!
脂肪注入は、太ももや腹部などから採取した脂肪を、顔のボリュームロスが気になる部分に注入する治療です。ヒアルロン酸と違って、自分の体の組織を使う点が最大の特徴。そのため、アレルギー反応のリスクが極めて少なく、仕上がりの質感も非常にナチュラルです。
以下、脂肪注入が向いているケースです。
- 仕上がりの自然さを最重視したい
- 長期間効果を保ちたい(メンテナンスの頻度を抑えたい)
- 自分の脂肪を有効活用したい
- ヒアルロン酸では満足できなかった
- クマや頬のボリュームロスを根本から解消したい
ただし、脂肪が完全に定着するとは限らないため、多少の吸収は想定内。医師の技術によって定着率や仕上がりに差が出やすく、初回で完了するケースもあれば、再注入(リタッチ)が必要なこともあります。
一方、ヒアルロン酸注入は、短時間で済む上にダウンタイムがほとんどないのが最大のメリットです。施術直後から効果を実感でき、気になる凹みやしわに即対応できるという点では、忙しい方や美容医療初心者にはうってつけの選択肢と言えます。
以下、ヒアルロン酸注入が向いているケースです。
- とにかく短時間で効果を出したい
- ダウンタイムが取れない
- イベント前などピンポイントで整えたい
- メスや脂肪採取に抵抗がある
- 額、涙袋、唇など、微細な調整をしたい
ただし、体に吸収される性質のため、半年〜1年ほど(中には18ヶ月程度持続するものもあり)で効果が薄れてしまいます。
また、浅い層に注入した場合にはチンダル現象(青白く透ける現象)などが起こることも。何度も打ち続ける必要があるため、コスト的には長期で見ると脂肪注入より割高になるケースもあります。
美容医療の選択肢は単純な「優劣」では測れない
脂肪注入とヒアルロン酸注入は、それぞれに目的に応じた最適な場面があります。ヒアルロン酸は、「とりあえず試してみたい」「明日の予定に間に合わせたい」という方に適しており、脂肪注入は「何度も注入したくない」「ナチュラルな若返りを目指したい」方にこそフィットする選択肢です。
そしてそのうえで、経験豊富な医師との丁寧なカウンセリングを通じて、最適な治療法を選択することが、後悔しない美容医療の第一歩となります。
まとめ
脂肪注入は、加齢によって失われた顔のボリュームを取り戻すうえで、自然で長期的な効果を得られる優れた選択肢です。しかし、その一方で「定着率の個人差」や「しこり・凹凸」「左右差」といったリスクも確かに存在します。
特に目の下のような皮膚が薄く繊細な部位では、慎重な施術判断が求められます。また、医師の技術力やアフターケアの内容によって仕上がりが大きく左右されるため、施術を受ける際は信頼できるクリニックを選び、納得のいくまでカウンセリングを行うことが欠かせません。
他の注入治療などとの違いをよく理解したうえで、自分に合った選択をすることが、後悔のない美容医療につながる第一歩です。
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