ヒアルロン酸注射は、シワ改善や輪郭形成など幅広い美容目的で用いられる施術ですが、「肌に優しいはずなのに肌荒れが起きた」という声も少なくありません。特に美容医療が初めての方にとっては、不安や戸惑いを感じる場面もあるでしょう。
しかし、この“肌荒れ”はすべてが副作用とは限らず、体質やスキンケアの習慣、施術方法など複数の要因が複雑に絡み合っています。ここでは、ヒアルロン酸注射に関連する肌荒れの正しい理解と医学的な対策を詳しく解説し、再発を防ぐためのケア方法や医師との向き合い方まで、専門的かつ実践的に紹介していきます。

国立琉球大学医学部医学科を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2024年アラジン美容クリニックに入職。
特にクマ取り治療では、年間症例数3,000件以上を誇るスペシャリストである。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様の悩みに真剣に向き合う。
ヒアルロン酸注射で肌荒れが起きる理由とは?
ヒアルロン酸は本来、皮膚や関節、眼球などにも自然に存在する保湿成分であり、美容医療ではその高い安全性と効果から幅広く使用されています。しかし、「肌に優しいはずなのに、注射後に肌荒れや赤みが出た」と不安を感じる方がいるのも事実です。
実際には、ヒアルロン酸そのものだけでなく、製剤の特性・肌質・施術環境など複数の因子が重なり合って肌荒れを引き起こすことがあり、原因は一様ではありません。本章では、ヒアルロン酸注射と肌荒れの関係を、構造的・医学的な観点から丁寧に解説します。
ヒアルロン酸の役割と医療用製剤の特徴
ヒアルロン酸は水分を保持する能力に優れた多糖類で、皮膚の弾力や潤いを保つ重要な役割を担っています。美容医療では、精製・加工されたヒアルロン酸製剤を皮下に注入し、シワの改善や輪郭形成、凹みの修正などを目的に使用します。
注目すべきは、ヒアルロン酸製剤の種類と性質の違いです。現在、美容領域で使用されるヒアルロン酸製剤は、以下の2つに分類されます。
種類 | 特徴 | 主な使用部位 |
---|---|---|
架橋型 | 高粘度・高弾性、形を保ちやすい | 顎・鼻・こめかみ・ほうれい線など |
非架橋型 | なめらかで広がりやすい | 目の下・ちりめんジワ・水光注射など |
架橋型は形をキープしやすくボリューム形成に優れていますが、皮膚内での刺激が強く、部位や肌質によっては赤みや違和感を伴うことがあります。非架橋型は柔らかく自然な仕上がりが得られやすい反面、持続期間はやや短くなります。
これ主な原因?アレルギー反応・炎症・血管閉塞・感染症の可能性
ヒアルロン酸自体は人体に馴染みやすく、アレルギー反応を起こすことは極めて稀とされています。ただし、製剤に含まれる架橋剤(BDDEなど)や保存料といった添加物に免疫が反応し、アレルギー症状や炎症を引き起こすケースは報告されています。
また、以下のような医学的リスクも見逃せません。
- 遅発型過敏反応(Type IV):注射後数日〜数週間後に硬結や紅斑が生じる免疫反応
- 血管閉塞:誤って血管内に注入された場合、皮膚の壊死や視力障害を招く可能性
- 感染症:注射部位に細菌が侵入すると、腫れや膿、発熱を伴う炎症が発生
とくに未承認の製剤や管理の甘い施設での施術では、これらのリスクが高まりやすいため、製剤の正規性とクリニックの衛生管理体制を確認することが不可欠です。
肌質との関係?敏感肌・バリア機能の低下がトラブルを誘発する
同じ施術を受けても、肌荒れが起きやすい人とそうでない人がいるのは、「肌のバリア機能」に大きく左右されるからです。
乾燥肌や敏感肌、慢性的な炎症(ニキビ・湿疹など)がある場合、肌が外的刺激に対して過剰に反応しやすい状態にあります。このようなタイミングで注射を受けると、わずかな物理刺激でも免疫反応が強く出てしまい、赤み・かゆみ・ヒリヒリ感が生じることがあります。
さらに以下のような体調・環境要因もリスクを高めます。
- 花粉症やアレルギーによる肌の一時的過敏状態
- ホルモン変動(生理前後)による皮脂・水分バランスの乱れ
- 睡眠不足や慢性ストレスによる免疫力の低下
施術前には、肌の調子が安定している時期を選び、必要に応じて保湿や生活習慣の調整を行うことが、安全性を高める鍵となります。
ヒアルロン酸製剤と副作用リスクの傾向
あくまでも一般的な肌荒れリスクを示しているものではありますが、施術方法や個人差によってリスクは前後します。
製剤名 | 主な使用部位 | 粘度・硬さ | 肌荒れリスク | 特徴 |
---|---|---|---|---|
ボリューマ | 顎・こめかみ | 高粘度 | 中〜高 | 骨格形成向き、長持ち |
ボリフト | 法令線・マリオネットライン | 中粘度 | 中 | 表情ジワに適応 |
ボルベラ | 目の下・口周り | 低粘度 | 低 | デリケートな部位向き |
また、製剤名はアラガン社製ジュビダームシリーズの一例であり、使用される製剤はクリニックによって異なります。必ず医師に確認を取りましょう。
肌荒れの原因は注射だけじゃない?外的・内的要因も確認しよう
前章では、ヒアルロン酸製剤の性質や注入時のリスクが肌荒れの直接的原因になり得ることを解説しました。けれど、実はそれだけでは不十分です。肌荒れの発症や長引く症状の背景には、「日々のスキンケア」「生活リズム」「肌質」といった外的・内的要因が大きく関わっています。
ここでは、ヒアルロン酸注射後の肌荒れを悪化させる“隠れたリスク”に焦点を当て、施術後に気をつけるべき環境や習慣、体調の影響まで、幅広く検証していきます。
外的刺激|摩擦・化粧・マッサージが悪化要因に
ヒアルロン酸注射を受けた直後の肌は、針の刺激や薬剤による軽度な炎症反応が起きている状態です。このタイミングでの外的刺激は、肌バリア機能をさらに低下させ、炎症を助長するリスクがあります。
特に注意すべきは以下の行動です。
- 洗顔時の強い摩擦や熱いお湯の使用
- ファンデーションやコンシーラーによる物理的圧迫
- 美顔器やリンパマッサージの使用
これらは一見無害に見えても、注射後の肌には過剰な負担となり、赤みやかゆみ、乾燥を引き起こす引き金になります。施術直後の「触れない」「こすらない」「塗りすぎない」が基本といえます。
内的影響|ホルモンバランス・体調不良・生活習慣
肌トラブルは、体の内側の変化にも敏感に反応します。とくにヒアルロン酸注射の前後で以下のような状態にあると、炎症や肌荒れを引き起こしやすくなります。
- 生理前後のホルモン変動による皮脂バランスの乱れ
- 睡眠不足による肌の修復機能の低下
- 慢性的なストレスによる免疫力の低下
- 食生活の偏り(糖質・脂質過多、ビタミン不足)
これらの影響は直接的にヒアルロン酸に反応しているわけではありませんが、“肌が荒れやすい下地”をつくってしまうため、施術後の反応を強めることになります。ヒアルロン酸注射の数日前からは、意識してコンディションを整えることが推奨されます。
製剤選定|粘度が高すぎる製剤や量・部位のミスマッチも注意
使用するヒアルロン酸製剤が肌荒れに影響を及ぼすこともあります。具体的には、部位に対して粘度が高すぎる製剤を使用した場合や、過剰な量を注入した場合です。
たとえば、皮膚が薄く動きやすい目元などに、硬さのある製剤を注入すると、圧迫や違和感が生じやすく、赤みや炎症が出ることがあります。また、肌質や表情の動きに合わない製剤選定は、不自然な仕上がりとトラブルの原因になります。
医師の判断と経験によって適正な製剤を選ぶことはもちろん、患者自身も「自分の肌に合うかどうか」を事前に相談できることが理想です。
肌荒れが起きたら?正しい対処法と避けるべき行動
前章では、ヒアルロン酸注射後の肌荒れは、施術そのものだけでなく、外的刺激や生活習慣、製剤選びなど多様な要因が関係することをご説明しました。では、実際に肌荒れが起きてしまったとき、どうすればよいのでしょうか。
赤み、腫れ、かゆみ、ヒリヒリ感。これらの症状は決して珍しいものではありませんが、対応を誤ると症状の長期化や悪化につながりかねません。ここでは、ヒアルロン酸注射後に肌荒れが起きた際に取るべき正しい行動と、絶対に避けるべき自己判断のリスクについて、専門的かつ実践的に解説します。
まず医師へ相談!赤み・腫れが続く場合の対処判断基準
肌荒れの初期症状は、たとえ軽度であっても、放置すべきではありません。注射直後に一時的な赤みや腫れが出るのは正常な反応の範囲内ですが、48時間以上持続する場合や、症状が日を追って悪化するようであれば、早急に医療機関を受診すべきです。
とくに次のような症状が見られる場合は、医師の診察が必須です。
- 赤みが広がる、または熱感を伴う
- 触ると痛みを感じる、腫れが強い
- 注入部位の皮膚色が紫や白っぽく変色している
- 化膿・膿のような分泌物が出ている
これらは、感染症や血管閉塞の初期兆候である可能性があり、放置すると皮膚の壊死や視覚障害に至る例も報告されています。したがって、「様子を見る」のではなく、「迷ったらすぐ相談」が基本です。
セルフケアのポイント!冷却・保湿・非刺激性スキンケアで応急対応
医師の診察を待つ間、軽度な赤みやヒリヒリ感に対しては、以下のようなセルフケアが有効です。
- 冷却:清潔な保冷ジェルや濡れタオルで肌を軽く冷やす(10分以内を目安に)
- 保湿:低刺激・無香料の保湿剤(ワセリンやセラミド配合クリームなど)を薄く塗布
- スキンケア:アルコール・香料・ピーリング成分の含まれる化粧品は避ける
また、メイクの再開は原則として医師の許可が出るまでは控えることが望ましいです。肌荒れを隠すためのファンデーションが、さらに炎症を助長してしまうケースも少なくありません。
NG行動!市販薬の乱用・自己判断でのステロイド使用
注意すべきなのは、「肌荒れ=市販のステロイドで対処すればいい」という誤解です。確かに一時的に赤みやかゆみは引くかもしれませんが、医師の指示なしにステロイド外用薬を使うことは絶対に避けてください。
理由は以下の通りです。
- 誤った使用により皮膚萎縮や色素沈着を招くリスク
- 感染症が背景にある場合、悪化させてしまう危険性
- 慢性炎症を引き起こし、治療期間が長引く可能性
また、抗ヒスタミン薬や抗炎症薬の内服についても、ヒアルロン酸製剤との薬剤相互作用のリスクがあるため、自己判断ではなく、必ず医師の確認を受けましょう。
再発を防ぐために知っておくべき施術前後のケア方法とは?
前章では、ヒアルロン酸注射後に肌荒れが起きた場合の対処法を具体的に解説しました。とはいえ、そもそもトラブルを未然に防げるなら、それが最も望ましいはずです。
ヒアルロン酸による肌荒れを予防し、美容医療の効果を最大限に活かすためには、施術前から施術後にかけてのケアの積み重ねが何よりも重要です。ここでは、トラブルを未然に防ぎ、次回以降の施術でも安心してヒアルロン酸注射を受けられるよう、予防法を丁寧にご紹介します。
事前準備|施術前のスキンコンディションを整える
ヒアルロン酸注射の前には、肌の状態を整えておくことが大切です。乾燥してバリア機能が低下している肌は、針刺激や製剤の注入によって炎症を起こしやすくなります。
施術の1週間前から意識すべきケアポイントは以下の通りです。
- 十分な保湿:セラミドやヒアルロン酸配合の保湿剤で角層の水分量を高める
- 紫外線対策:施術直前の炎症や日焼けは肌トラブルの原因になるため、日焼け止めを徹底
- 十分な睡眠と栄養:肌のターンオーバーと免疫機能を整える基本条件
- ピーリングや脱毛の回避:直前の刺激系施術は肌の耐性を下げてしまうため避ける
これらの準備によって、ヒアルロン酸製剤に対する反応を抑え、トラブルの発生率を大幅に低下させることができます。
施術後の注意!紫外線・摩擦・角質ケアの回避
施術直後の肌は、目に見えなくても軽微な炎症反応が起きています。とくに注射後72時間は「皮膚が外的刺激に非常に敏感な状態」であるため、ケアの質が仕上がりと再発予防に直結します。
施術後に絶対に避けるべき行動は以下の通りです。
- 強い摩擦(洗顔・タオルドライ・マッサージ)
- 紫外線暴露(短時間でも必ずUVカットを)
- 角質除去(スクラブ・ピーリング化粧品・洗顔ブラシ)
- 長時間の入浴・サウナ(血行が良くなり炎症が悪化する場合あり)
代わりに取り入れたいのが、保湿・冷却・低刺激スキンケアの3点セットです。特に冷却は、腫れや赤みが強い時期に有効であり、保湿は肌の回復過程を支える要となります。
クリニック選び!リスク説明やケア指導の有無が重要
肌荒れを防ぐ最大の鍵は、「信頼できる医師と正しい情報を共有すること」です。近年、SNSや広告で見かける低価格施術にはリスク説明やアフターケアの説明が不十分な場合も少なくありません。
良質な医師・クリニックを見極めるポイントは以下の通りです。
- カウンセリングに十分な時間を確保してくれる
- 使用するヒアルロン酸製剤の特徴やリスクを丁寧に説明してくれる
- 施術後の経過観察やトラブル時の相談体制が整っている
- 症例数や実績が明示されている
「美容医療は製剤よりも医師で決まる」と言われるほど、ヒアルロン酸注射では医師の知見と技術、そして患者とのコミュニケーションが極めて重要です。
医師との連携!自分に合った施術計画を立てる
後悔しない美容医療には、「医師との対話」が不可欠です。ヒアルロン酸注射では、使用する製剤の種類・注入量・部位によって仕上がりが大きく変わります。だからこそ、医師と一緒に自分の希望と適応をすり合わせることが重要です。
具体的に確認すべきポイントは以下の通りです。
- なぜその製剤を選ぶのか(持続性・粘度・注入深度の違い)
- 注入量はどれくらいが適切か(多すぎると不自然になる場合も)
- 注入する部位と目的(しわ改善・輪郭形成・ボリューム補填など)
- 想定される副作用とダウンタイムの説明があったかどうか
医師と二人三脚で施術計画を立てる姿勢こそが、安全性と満足度を高める最短ルートです。美容医療は気後れして質問しづらいという方も少なくありません。しかし、ヒアルロン酸注射は“対話が施術の一部”です。不安なこと、気になることは遠慮なく医師に伝えるべきです。
まとめ
ヒアルロン酸注射による肌荒れは、不安を感じさせる現象ではありますが、その多くは適切な知識と対処法によって予防や改善が可能です。大切なのはすぐに自己判断せず、医師と連携すること。製剤の選定や施術タイミング、アフターケアまで丁寧に取り組むことで、安全性と美容効果の両立が実現します。
また、事前の準備や医師との十分なコミュニケーションによって、不要なリスクを避けることができます。美容医療を怖がらず、正しく理解し、自分の肌と向き合う姿勢こそが、理想的な美しさへの第一歩です。
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