目の下のシワへのボトックスとは、下眼瞼の眼輪筋やその上の皮膚にA型ボツリヌス毒素を注射し、筋肉の動きを抑えることでシワの目立ちを和らげようとする施術を指します。
ただし、国内で美容目的に承認されているA型ボツリヌス毒素製剤について、国が認めた効き目の範囲(添付文書では「効能又は効果」と呼ばれます)は「65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺」と定められており、目の下はこの範囲に含まれません。(※添付文書とは、薬の製造販売会社が国の承認を受けて作成する公式の説明書で、何に使えるか、どのくらいの量を使うか、使ってはいけない人は誰かが記載されています)
目の下への注射を扱った研究は存在するものの、いずれも被験者数が数十名規模にとどまり、初期の研究で中心的に測定されていたのは「シワの改善」ではなく「目の開きの変化」でした。
本記事は美容皮膚科の医師監修のもと、添付文書と学術論文に基づき、承認の範囲・報告されている効果と限界・目の下ならではのリスク・受診前の確認事項・別の選択肢の五つを整理します。

国立琉球大学医学部医学科を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2024年アラジン美容クリニックに入職。
特にクマ取り治療では、年間症例数3,000件以上を誇るスペシャリストである。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様の悩みに真剣に向き合う。
目の下のシワにボトックスは承認されていない
国内で美容目的に承認されているA型ボツリヌス毒素製剤の効能又は効果は「65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情皺」であり、目の下(下眼瞼)はこの範囲に含まれません。使用できる部位は添付文書の警告によって厳密に限定されており、この事実がすべての情報を読み解く前提になります。
この章のポイント
・承認範囲は眉間と目尻のみ
・目の下は添付文書に記載なし
・承認外は効果否定ではない
添付文書が部位ごとに何を定めているかを整理すると、次のようになります。
| 部位 | 承認された効能又は効果 | 定める注射部位 | 1回投与量の上限 | 根拠となる記載 |
|---|---|---|---|---|
| 眉間 | 承認あり | 皺眉筋4部位・鼻根筋1部位 | 20単位 | 効能又は効果 |
| 目尻 | 承認あり | 眼輪筋外側6部位 | 24単位 | 効能又は効果 |
| 目の下(下眼瞼) | 記載なし | 規定なし | 規定なし | 警告で使用しないと明記 |
「記載なし」は効果を否定するものではなく、承認申請の際に有効性と安全性が確認された範囲に含まれないことを意味します。
添付文書が認める部位は眉間と目尻
添付文書が使用を認めているのは、眉間と目尻の2部位のみです。
添付文書の用法及び用量は、眉間には左右の皺眉筋に各2部位と鼻根筋1部位の計5部位に合計10〜20単位、目尻には左右の眼輪筋の外側に各3部位の計6部位に合計12〜24単位を筋肉内に注射すると定めています。1回あたりの上限は眉間20単位・目尻24単位で、同時治療の場合は合計44単位までとされています。
65歳以上への投与は推奨されておらず、65歳未満より有効性が低く有害事象の発現率が高くなるとも記載されています。効果は通常3〜4か月で消失し、投与を繰り返す必要があるとされ、3か月以内の再投与は避けることとされています。これらはいずれも承認された眉間・目尻への投与を前提とした記載です。
目尻と目の下は別の注射部位
目尻が承認されているからといって、目の下にも同じように使えるとは限りません。
添付文書の目尻の用法及び用量は「左右の眼輪筋の外側に各3部位」と規定しており、指定されているのは眼輪筋のうち外側の部分です。眼輪筋は目のまわりを取り囲む輪状の筋肉で、外側の部分と下眼瞼の部分は同じ筋肉の中でも別の場所にあたります。下眼瞼は皮膚が薄く眼球と接し、まばたきや涙の排出にも関わる構造であるため、外側で確認された範囲がそのまま下眼瞼にも当てはまるとはいえません。
「同じ筋肉だから同じように扱える」という説明は、添付文書が部位を特定している事実とは整合しません。説明を受ける際は、どの筋肉のどの部位に何単位を注射するのかを確認しておくと安心です。
承認の範囲外で使う場合に変わること
承認された範囲の外で使用する場合、安全性の確認状況や万一の際の対応の前提が変わります。
添付文書は重要な基本的注意として「これら以外の適応には安全性が確立していないので絶対使用しないこと」と記載しています。また公的機関は、美容目的の自由診療で用いる薬や材料、機器などが医薬品医療機器等法で承認等がされていない場合があると注意を促しています。
国内で承認されている医薬品の副作用による健康被害には公的な救済制度がありますが、原則として決められた用法・用量等に従って使用されていない場合は救済対象になりません。個別の事案が対象になるかどうかは、相談の場で確認すべき事項です。
説明を受ける際は、使用する製剤の名称と、その製剤で承認されている部位を確認するところから始められます。
下まぶたへの注射で報告されている効果
承認の範囲を確認したところで、次に気になるのは目の下への注射で実際に何が報告されているかです。
目の下への注射を扱った研究は存在しますが、被験者数は15名・19名・42名と小規模です。初期の研究ではシワの改善と目の開きの変化の両方が測定されていますが、下眼瞼単独へのシワ改善効果は4段階評価で「軽度」に届かない水準にとどまり、はっきり測定できたのは眼瞼裂の拡大、つまり目が大きく見える変化のほうでした。いずれも国外の研究であり、日本人を対象とした試験は公表されていません。
この章のポイント
・研究はいずれも小規模である
・シワ改善の評価は弱い水準にとどまる
・国内データは確認できていない
下眼瞼への注射を扱った研究の規模と、何を測定したかを整理すると、次のようになります。
| 研究 | 被験者数 | 下眼瞼への投与量 | 主な成果指標 | 報告された有害事象 |
|---|---|---|---|---|
| 2001年の研究 | 女性15名 | 2単位 | シワの改善(弱い)・眼瞼裂の拡大 | 記載なし |
| 2003年の研究 | 女性19名 | 4単位・8単位 | シワの改善・眼瞼裂の拡大 | 8単位群8名中8名 |
| 2025年の研究 | 42名 | 片側2〜3単位 | シワの本数 | 42名中1名 |
いずれも国外の小規模研究であり、対照群を置いた無作為化比較試験には当たりません。有害事象欄の分母は研究ごとに異なります。
シワの改善は弱く、目の開きの変化が目立った
2001年に報告された研究では、シワの改善と目の開きの変化の両方が測定されましたが、下眼瞼単独でのシワ改善は弱い水準にとどまりました。
この研究では女性15名の下眼瞼に2単位を、瞳孔中央線上で睫毛縁の3mm下に注射しています。医師によるシワ改善の評価は、4段階(0が改善なし、1が軽度、2が中等度、3が著明)で下眼瞼のみの注射が平均0.7、外側眼窩部を併用した場合が1.8でした。つまり下眼瞼だけに注射した場合、シワの改善は「軽度」にも届いていません。
一方、眼瞼裂の拡大が認められた割合は下眼瞼のみで40%、併用で86%と報告され、拡大の幅は下眼瞼のみで安静時0.5mm・満面笑顔時1.3mm、併用では安静時1.8mm・満面笑顔時2.9mmでした。
15名という小規模な研究で、対照群を置いた無作為化比較試験でもありません。また著者全員が製造販売元のコンサルタントであり、同社の資金提供を受けた研究である点も踏まえておく必要があります。目を大きく見せたい人には参考になっても、シワを消したい人にとっては、単独注射での改善が弱かったという事実のほうが判断材料になります。
量を増やすと副作用が上回る
投与量を増やすほど、副作用を感じる人の割合も高くなる傾向が報告されています。
2003年の用量設定研究では、女性19名を対象に、下眼瞼に両側4単位を投与する群11名と、両側8単位を投与する群8名が比較されました。両群ともシワの改善は医師・患者の双方が認めていますが、8単位群では8名中8名が煩わしい副作用を報告し、その内容は下眼瞼の浮腫と、まぶたを閉じる筋肉の働きの低下でした。著者らは用量反応関係を認めつつ、高用量では効果が頭打ちになる可能性を示唆し、より低い2〜4単位の用量を推奨しています。
「少量ずつ注入するので安全」という説明には、この研究が一定の根拠を与えます。ただし分母はわずか8名であり、この割合をそのまま一般的な発生率として読み替えることはできません。少量という前提が崩れたときに何が起きるかを示す数字としてとらえる必要があります。
涙袋のくぼみを対象とした近年の報告
2025年に報告された研究は、涙溝と軽い下眼瞼のふくらみを対象としたものです。
42名を対象に、1点あたり0.66単位を下眼瞼の長さに応じて3〜4点、片側計2〜3単位、筋肉ではなく真皮内に注射する手技が用いられました。画像解析による眼周囲のシワの本数は、治療前の左160.57本から2週間後には93.71本へ減少したと報告されています。有害事象は42名中1名に偽性の下眼瞼のふくらみが2週間後に生じたのみで、内出血や下眼瞼のゆるみ、複視、ドライアイ症状の報告はありませんでした。
ただし対照群のない単一施設の研究であり、被験者はアジア人42名のみ、追跡期間も3か月にとどまります。使用された製剤も国内で美容目的に承認された製剤とは別のものです。この研究があることをもって、承認の範囲そのものが変わるとは言えません。
研究について調べるときは、被験者数と主な評価項目をメモしておくと、記事や説明の内容を比較しやすくなります。
下まぶたに打つと起きうること
研究で報告されている効果の実像を踏まえると、次に気になるのはリスクです。目の下への注射で懸念されるのは、眼輪筋がゆるむことで下まぶたの位置や動きが変わることと、その変化を打ち消す手段が乏しいことです。
承認された部位への投与でも眼周囲の副作用は記録されており、その内容が下眼瞼にとって何を意味するかを読み解くかたちで整理します。
この章のポイント
・眼輪筋のゆるみが焦点になる
・戻す手段が乏しいことに注意
・数値は承認部位の値である
眼輪筋がゆるむと下まぶたの位置が変わる
承認された部位への投与でも、まぶたの位置や動きに関わる副作用は記録されています。
添付文書には、承認部位(眉間・目尻)への投与における副作用として、眼瞼外反・眼瞼内反・閉瞼不全が1%未満、眼瞼下垂が1〜5%未満、兎眼が頻度不明として記載されています。これらはいずれも眉間・目尻への投与時の頻度であり、下眼瞼への投与のデータではありません。
眼輪筋は目を閉じる働きを担う筋肉で、その働きが弱まるとまぶたを閉じる力と、まぶたを眼球に沿わせる力が同時に低下すると考えられています。2003年の用量設定研究で8単位群の全員が訴えた副作用は、この閉じる力の低下にあたるとみられます。2025年の研究で報告された偽性の下眼瞼のふくらみも、筋肉がゆるむことで輪郭が変化した結果として理解できます。
添付文書には、重大な副作用として眼障害(重篤な角膜露出、持続性上皮欠損、角膜潰瘍、角膜穿孔)も記載されています。
涙と瞬きへの影響
目のまわりへの注射は、部位によって涙の量に逆の影響を与えることがあります。
眼周囲へのボツリヌス毒素注射は、涙腺の涙液産生を減らし涙液の蒸発を増やすことで目を乾かしうると報告されています。眼輪筋の外側部への注射は涙液産生の減少につながりうるとされ、外側の注射部位は眼窩縁から少なくとも1cm上方かつ外側にすべきだと考えられています。一方で内側の眼瞼への注射は涙の排出を妨げることでドライアイの治療になりうるとも報告されており、同じ薬剤でも部位によって涙に対する働きが逆になる構造があります。
承認部位を対象とした1678名の個別患者データのメタアナリシスでは、治療関連の有害事象が実薬群24%に対しプラセボ群16%、眼瞼の感覚異常が2.5%対0.3%、眼瞼下垂が1.8%対0%で、眼瞼浮腫も実薬群で有意に高かったと報告されています。この解析の対象も承認部位への投与であり、眼瞼浮腫そのものの発現率は明らかにされていません。
眼瞼浮腫については、静脈やリンパの流れの停滞と、毒素の局所拡散による筋肉の緊張低下が重なって起こりうると考察されています。
効果を打ち消す手段がない
望まない変化が起きた場合も、効果が消えるまで時間を要するのが実情です。
添付文書は、本剤の投与が対症療法であり、効果は通常3〜4か月で消失し、投与を繰り返す必要があると記載しています。これは裏を返せば、望まない結果が生じた場合にも、効果が消失するまでの時間が必要になることを意味します。ヒアルロン酸のような充填材では分解酵素を用いる方法が想定されていますが、ボツリヌス毒素にはこれに相当する手段がありません。
そのため対処の重心は「起きてから戻す」ではなく「起きる前に適応を見極める」ことに置かれます。万一の場合にどのように対応するのか、どの程度の期間を見込む必要があるのかを、施術前に言葉で確認しておくことが実務的な備えになります。
日常のまばたきや涙の出方に変化がないか、鏡の前で確認する習慣を持っておくと変化に気づきやすくなります。
受ける前に確かめる下まぶたの状態
効果を打ち消す手段が乏しいとわかったところで、判断は施術当日ではなく相談前から始まります。確かめる対象は、下まぶたのゆるみ、自分が禁忌に当たらないか、医療機関の体制の3つです。
この章のポイント
・下まぶたのゆるみを自宅で確認
・禁忌に当たらないか確認する
・医療機関の体制も確認する
自宅でできる下まぶたのゆるみチェック
下まぶたのゆるみは、一般的な診察手技を応用して鏡の前でも大まかに確認できます。
手順は次のとおりです。ただしこれは診断ではなく相談のための材料であり、この手技自体はボツリヌス毒素注射の適応判定として検証されたものではない点に注意が必要です。
- 明るい場所で鏡に向かい、正面を見る
- 清潔な指で下まぶたの中央を眼球から離すように外側へそっと引く
- 指を離し、まぶたが元の位置に戻るまでの時間を数える
- まばたきをせずに戻るか、まばたきが必要かを確認する
戻る速さの目安として、すぐに戻れば正常、2〜3秒かかる場合や4〜5秒かかる場合はゆるみがあり、5秒を超えてまばたきで戻る場合や元の位置に戻らない場合はさらに強いゆるみがあるとされています。正面を見た状態で下まぶたを外側に引いたとき、内側の涙点が動く量は0〜1mmが目安とされ、2mm以上の変位はゆるみのサインとみなされます。
加齢によって下まぶたを支える組織の強度が低下し、腱が伸びやすくなることは知られており、ゆるみは誰にでも起こりうる変化で異常ではありません。眼瞼形成術の分野では、術後の下まぶたの位置異常の最も多い原因が、術前にゆるみを認識できていないことだと指摘されています。この記述は手術に関するものであり、注射にそのまま置き換えられるものではありません。
強く引っ張らない、痛みがあれば中止する、コンタクトレンズは外して行うといった注意も必要です。目に痛みがある、見え方が変わった、まぶたが閉じにくいといった症状がある場合は、自己判断せず眼科を含む医療機関を受診してください。
施術を受けられない人
添付文書は、施術を受けられない人の条件をいくつか定めています。
- 全身性の神経筋接合部の障害がある人
- 妊娠中・妊娠の可能性がある人・授乳中の人
- 本剤の成分に過敏症の既往がある人
- 他のボツリヌス毒素製剤で治療中の人
小児等を対象とした臨床試験は実施されておらず、65歳以上への投与は推奨されていません。65歳以上では65歳未満より有効性が低く、有害事象の発現率が高くなるとも添付文書に示されています。
筋弛緩剤やアミノグリコシド系抗生物質、抗コリン剤、ベンゾジアゼピン系薬剤などとの併用には注意が必要とされ、服用中の薬をすべて申告する必要があります。他のボツリヌス毒素製剤による治療中は併用禁忌にあたるため、他院での施術歴も含めて申告が求められます。
これらは承認された部位への投与を前提とした条件であり、承認範囲外で使う場合にはそもそも安全性が確立していないという前提が重なります。
医療機関に確認する項目
公的機関は施術前の確認項目として、使用する薬がどのようなものか自分でも説明できるか、効果だけでなくリスクや副作用についても知り納得したか、ほかの施術方法や選択肢の説明も受けて自分で選択したか、その施術が「今すぐ」必要かという4点を挙げています。
これに、目の下への注射に即した実務的な確認項目を加えると、次のようになります。
- 使用製剤の名称と承認されている部位
- 目の下がその範囲に含まれるかの説明
- 注射部位・単位数・注射の深さ
- 望まない変化への対応方針と見込み期間
- 施術時間外に異常が起きた際の連絡先
「絶対に失敗しません」「リスクはありません」といった説明が返る場合は、添付文書に記載された副作用と整合していない可能性があります。費用に触れる場合も、一般的な目安としての金額に加え、望まない変化が生じた場合の再診や対応が含まれるかどうかを確認しておくと安心です。相談は施術を決めるための場ではなく、受けない判断も含めて材料を得るための場です。
確認したい項目と自分の下まぶたの状態を紙に書き出しておくと、複数の医療機関を比較しやすくなります。
目の下のシワに検討される別の選択肢
受診前の確認事項を踏まえたうえで、最後に目を向けたいのは代わりの選択肢です。目の下の悩みは、表情でできるシワ・無表情でも残る線・くぼみによる影の3つに分かれ、どれに当たるかによって検討される手段が変わります。
ボツリヌス毒素が働きかけるのは筋肉の動きであり、動きに由来しない変化には別の手段が検討されます。
この章のポイント
・目の下の悩みは3種類に分かれる
・動き以外の変化には効きにくい
・くぼみには充填材も選択肢
目の下の悩みを3つに切り分けると、次のように整理できます。
| シワの種類 | 見分け方 | 主な背景 | 主に検討される方向 |
|---|---|---|---|
| 表情でできるシワ | 無表情で消える | 筋肉の動き | 動きへの働きかけ |
| 常にある線 | 無表情でも残る | 皮膚の変化 | 皮膚への働きかけ |
| くぼみによる影 | 横からの光で影 | 容積の不足 | 容積を補う方向 |
複数のタイプが重なっている場合も多く、この表は相談の場で自分の状態を説明するための見取り図として使えます。
シワの種類で選択肢が分かれる
3種類の見分け方は、無表情のときに消えるか、指で伸ばすと消えるか、影として見えるかです。
無表情のときに鏡で消えるか残るかを確認し、指で下まぶたの皮膚を軽く伸ばして消えるかを確かめ、横から光を当てて影として見えるかを見ることで、自分の悩みがどれに近いかを大まかに判定できます。
表情のときだけ現れるシワは筋肉の動きに由来する部分が大きく、無表情でも残る線は皮膚そのものの変化が関わり、筋肉の動きを抑えても消えるとは限りません。影として見える部分はくぼみや段差に由来し、筋肉の動きとは別の問題です。
ボツリヌス毒素は筋肉の動きに作用する薬剤であるため、3つのうち作用が期待される範囲は限られます。糸を用いる方法や高密度焦点式超音波、レーザーといった手段も存在しますが、下眼瞼を対象とした比較試験は公表されておらず、それぞれの適応や効果の程度は診察のうえで判断されます。
くぼみに対するヒアルロン酸の実測
影として見えるくぼみに対しては、充填材で容積を補う方向が検討されます。
眼窩下部のくぼみを対象とした無作為化・評価者盲検・無治療対照の多施設共同研究(333名、充填材群287名・無治療対照群46名)では、3か月時点で両側同時に1段階以上改善した割合が、充填材群87.4%に対し対照群17.7%でした。針を使った群とカニューレを使った群で分けると、それぞれ89.6%、84.9%が改善しています。この研究は製造販売元が関与したものであり、著者に同社の関係者を含みます。
治療に関連する有害事象は充填材群全体で12.7%(針4.9%、カニューレ20.9%)で、内訳は注入部位の腫脹3.8%、疼痛2.5%、内出血1.6%などでした。青みを帯びる現象の確認例はなかったと報告されています。この研究で用いられた充填材は国内で眼窩下部への使用が承認されているものではなく、この数値を国内で提供される施術一般にそのまま当てはめることはできません。くぼみと動きは別の問題であるため、両方が混在している場合は手段も分けて検討されます。
承認された部位である目尻への注射
目の下と目尻のシワが連続して見える場合、承認された範囲内で対応できる部分もあります。
添付文書に記載された目尻の臨床成績では、投与後30日目の改善率が24単位群68.3%・12単位群56.6%で、効果持続期間の中央値は24単位群95日・12単位群85日とされています。眉間についても、初回投与4週間後の改善率が20単位群88.6%・10単位群86.4%、平均効果持続期間が15.6週・13.3週と記載されています。
これらは承認申請の際に有効性が確認された部位の数値であり、下眼瞼にそのまま当てはめられるものではありません。数値はあくまで集団の記録であり、個人の結果を保証するものでもありません。自分の悩みが動きによるものか、皮膚によるものか、くぼみによるものかを、相談前に言葉にしておくと話が進めやすくなります。
自分の悩みがどの種類に近いかを整理したうえで、カウンセリングで相談してみるのも一つの方法です。
目の下シワボトックスによくある質問
ここでは、目の下のシワとボトックスに関して多く寄せられる質問に、本文の内容に沿って簡潔に答えます。
目の下のシワにボトックスは打てますか?
国内で美容目的に承認された製剤の効能又は効果は眉間と目尻の表情皺で、目の下は含まれません。添付文書は承認部位以外へ使用しないよう記載しています。
目尻に打てるなら目の下も同じですか?
添付文書は目尻について眼輪筋の「外側」に部位を特定しており、下眼瞼は別の場所にあたるため同じには扱えません。
目の下にボトックスを打つと下まぶたは垂れますか?
下眼瞼に限定した発生率を示すデータはありませんが、承認部位への投与でも眼瞼外反や閉瞼不全は報告されており、量を増やした研究では副作用の訴えが増えています。
目の下のボトックスは失敗したら元に戻せますか?
添付文書は本剤が対症療法で効果は通常3〜4か月で消失すると記載しており、望まない変化も消えるまでの時間が必要になります。
目の下のくぼみや影にもボトックスは効きますか?
ボツリヌス毒素は筋肉の動きに作用する薬剤で、くぼみや影には容積を補う充填材など別の手段が検討されます。
まとめ
目の下のシワへのボトックスを検討するうえでの結論は明快です。国内で美容目的に承認されているA型ボツリヌス毒素製剤の効能又は効果は眉間と目尻の表情皺であり、目の下はこの範囲に含まれません。
目の下への注射を扱った研究は存在するものの規模は小さく、初期の研究で中心的に測定されていたのは目の開きの変化であって、シワの改善そのものではありませんでした。加えて、望まない変化が起きても効果が消えるまで時間を要するため、判断は施術を受けた後ではなく受ける前に行う必要があります。
承認の範囲外であることは、効果がないという意味ではなく、有効性と安全性が確認された範囲がそこまでであるという意味です。数値はいずれも集団の記録であり、国外の小規模研究を含むことも忘れてはいけません。
自分でできることは、下まぶたのゆるみを確かめること、自分のシワがどの種類に近いかを言葉にすること、確認したい項目を書き出すことの3つです。目の下の悩みが動きによるものか、皮膚によるものか、くぼみによるものかを一緒に見極める場として、福岡院のカウンセリングを活用いただけます。
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参考文献・出典
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