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肝斑は産後に消える?薄くなる経過と授乳中にできるケア

産後の肝斑とは、出産前後のホルモン環境の変化と関わって頬骨のあたりに左右対称に生じる、輪郭のぼやけた淡褐色の色素斑を指します。

妊娠に伴って生じた場合は出産後に良くなってくることが多いとされていますが、「産後何か月で消える」という期間については、根拠となる調査が示されていません。そのぶん、経過を自分で追う記録の方法、頬に出ている色素斑が肝斑なのか他のシミなのかの見分け方、そして授乳中に使える薬の考え方を知っておくことが、今の時期にできることになります。

ここでは医師の監修のもと、経過の見きわめ・他のシミとの区別・授乳中に使える薬の考え方・日々続けられるケアという4つの観点から整理していきます。

 

 

産後の肝斑は薄くなることが多い

妊娠に伴って生じた肝斑は、出産後に良くなってくることが多いとされています。ただし「何か月で消える」という期間は人によって大きく異なり、一律の目安は示されていません。

この章では、期間に幅がある理由と、他人の経過ではなく自分の経過を確かめる記録の方法を確認します。

この章のポイント
・出産後に良くなることが多いとされる
・消えるまでの期間は断定できない
・記録して自分の経過を確かめる

妊娠中に濃くなり産後に薄くなる流れ

肝斑は30歳以降の女性の顔に左右対称に生じる淡褐色の色素斑で、妊娠に合併して発生することが知られています。

メラノサイトやその近くにあるケラチノサイトでエストロゲン受容体の発現が増えることや、血管新生に関わる因子の増加、肥満細胞の増加、炎症の関与も指摘されており、色素だけの問題ではないと考えられています。

妊娠に伴って生じた場合は出産後に良くなってくることが多いとされていますが、これはホルモンの環境が出産後に変化していくことの帰結と言えます。ホルモンの環境が戻ることと、色素斑が完全に消えることは同じ意味ではない点には注意が必要です。

妊娠中に色が濃くなったと感じても、それ自体は珍しいことではなく、多くの場合は出産後の回復に伴って目立ちにくくなっていくと考えられています。濃さの感じ方には日焼けや体調による変動も重なるため、一時的な変化と長期的な傾向を分けて捉える視点が助けになります。季節による紫外線量の違いや、寝不足が続いた時期の体調も、見え方に影響しうる要因として挙げられます。

消える時期を断定できない理由

「産後◯か月で消える」という具体的な期間について、根拠となる調査や研究は示されていません。

インターネット上には具体的な月数を挙げた説明も見られますが、その多くは出典が示されておらず、公表された調査に基づく数値とはいえない状況です。

肝斑は表皮型・真皮型・混合型に分けて説明されることがありますが、この分類は厳密な組織学的な区分というより実務上の目安と考えられており、専用の検査の所見も一定しないとされています。

経過の予測が人によって大きく異なりうる構造がある以上、他人の平均的な期間を待つよりも、自分自身の経過を測ることのほうが現実的です。この視点を持っておくと、インターネットで見かけた期間と自分の経過が一致しなくても、必要以上に不安になりにくくなります。

変化を自分で記録する手順

経過は、毎月同じ条件で撮影した写真を並べることで、自分の目で確かめられます。一例として、次のような手順が考えられます。

  1. 月に1回、同じ曜日・同じ時間帯に撮影する
  2. 直射日光や照明の色が変わらない場所を選ぶ
  3. 正面・左斜め・右斜めの3方向を、化粧をしない状態で撮る
  4. カメラの補正機能や美肌機能をオフにする
  5. 撮影日をファイル名やメモに残す

直近の1枚だけと見比べるのではなく、3か月前・6か月前の写真と並べて比較すると変化をつかみやすくなります。日によって見え方は光や体調で変わるため、短い間隔での比較は判断材料になりにくいといえます。

この記録は診断のためのものではなく、受診の際に経過を説明するための一例としての工夫です。遮光を続けながら記録を重ねることで、経過がより読み取りやすくなります。同じ条件で撮り続けることで、色の濃淡だけでなく、色素斑の広がりや境目の変化にも気づきやすくなるという利点もあります。

まずは今日、正面と左右斜めの3枚を、化粧をしていない状態で撮ってみてください。

 

肝斑と他のシミを見分ける

記録を続けようとすると、次に浮かぶのは「そもそもこれは肝斑なのか」という疑問です。

肝斑には左右対称であること、輪郭がぼやけていること、目の周囲を避けて分布することといった所見が知られており、まずこれに当てはまるかを確認します。見分けに意味があるのは、選べる手段が変わるためです。

この章のポイント
・4つの所見をセルフチェックする
・見分けで選べる手段が変わる
・当てはまらない特徴は受診の目安

肝斑に多いとされる4つの所見

肝斑では、左右対称であること、輪郭がぼやけていること、頬骨からおでこにかけて多いこと、目の周囲を避けて分布することが典型的な所見として知られています。

鏡の前で確認できる4つの視点を整理すると、次のようになります。

確認する視点 肝斑に多いとされる所見 当てはまらないときに考えること
左右対称性 両側に同じように出る 片側だけなら別の可能性
輪郭 ぼやけてもやっと広がる くっきりした円形なら別
目の周囲 避けて分布する まぶたにかかるなら別
出現した時期 妊娠中から産後 以前からあれば別

「当てはまらないときに考えること」は特定の病名を示すものではなく、診察で確かめるための材料です。産後は複数の種類の色素斑が同じ顔に併存することもあり、1つに決めきれないこと自体は珍しくない点に留意してください。

化粧や日焼け止めの色ムラと見分けがつきにくいこともあるため、洗顔直後や朝の同じ時間帯など、条件をそろえて確認すると判断の精度が上がります。

見分けが治療の分かれ道になる

肝斑かどうかの見分けは、そのまま使える手段の違いに直結します。

肝斑についてはレーザー治療は無効とされ、かえって色が濃くなる可能性も指摘されています。一方で、難治性の症例に限ってレーザーを検討する保守的な考え方もあり、「肝斑にレーザー」が一般的な第一の選択にはなりにくいと考えられます。

産後のシミ全般に対して同じ「シミ取り」という言葉が使われることがありますが、肝斑かどうかで扱いが変わるため、まず見分けが先に来ると整理できます。

代替となる選択肢には、メラニンの合成を抑える外用や、皮膚の表面をはがすことで生じる効果を利用したケミカルピーリングがあります。ピーリングは表皮のターンオーバーを促し、たまったメラニン色素を角質と一緒に取り除く仕組みとされますが、目に見える変化には継続的な治療と遮光の両方が欠かせません。

自己判断が難しいときの受診の目安

形や色が急に変わった場合や、片側だけに出ている場合は、自己判断で様子を見ずに医療機関に相談することが勧められます。

  • 形や色が急に変わった
  • 片側だけに出ている
  • 盛り上がりや硬さがある
  • 出血やかさぶたを繰り返す
  • 境目がぎざぎざで不規則

これらは肝斑に典型的とされる所見から外れる特徴であり、別の判断が必要になる可能性があるため、自己判断をせず医療機関で相談することが望ましいと考えられます。

産後は体調の変化も多い時期であるため、肌の変化だけを切り離さずに、気になる点をまとめて相談する形でも差し支えありません。相談先に迷う場合は、まずかかりつけの産婦人科や皮膚科に状況を伝えるところから始めても構いません。

産後は受診の時間を取りにくいことも多いため、気になる変化に気づいた時点で記録を残しておき、受診の機会にまとめて相談する順序も一例として考えられます。

鏡の前で、頬のあたりの色素斑が左右対称に出ているかどうかを確認してみてください。

 

肝斑に承認されている薬とそうでない薬

見分けがついたところで、次に気になるのは薬の話です。トラネキサム酸という成分は、薬局で買える一般用医薬品では「肝斑の改善」が効き目として認められている一方、病院で処方される医療用の薬では、国が認めた効き目の範囲に肝斑が含まれていません。

この違いを理解するうえで知っておきたいのが「添付文書」です。添付文書とは、薬の製造販売会社が国の承認を受けて作成する公式の説明書で、どんな症状に使えるか、どのくらいの量を使うか、使ってはいけない人は誰かといった情報が記載されています。医師や薬剤師向けの文書ですが、その薬で何が認められているかを確認する際の基準になります。

添付文書に肝斑が「含まれない」ことは、効果がないという意味ではなく、国が承認した範囲がどこまでかという違いです。

この章のポイント
・医療用の効能に肝斑は含まれない
・一般用は肝斑改善薬として区分
・内服の効果はやめると徐々に戻る

医療用トラネキサム酸の効能又は効果

医療用のトラネキサム酸製剤の添付文書に記載された効能又は効果には、肝斑は含まれていません。

添付文書に記載されている効能又は効果は、全身性の出血傾向、局所の異常出血、湿疹や蕁麻疹などにともなう症状、扁桃炎や咽喉頭炎にともなう症状、口内炎にともなう口内痛の5項目であり、この中に肝斑・しみ・美白は含まれていません。

用法及び用量は、通常成人で1日750〜2,000mgを3〜4回に分けて内服するよう定められています。一方で、慶應義塾大学病院の医療・健康情報サイトでは肝斑の治療としてビタミンCとトラネキサム酸の内服が挙げられており、これは添付文書の効能又は効果とは別の水準の診療上の情報です。

個別の処方が適切かどうかは、診察を受けた医師が判断する事項です。相談の際は、使用する薬の名称と、その薬で認められている効き目の範囲を確認しておくと話が進めやすくなります。

同じ成分でも承認された範囲が異なることを整理すると、次のようになります。

区分 効能又は効果に肝斑を含むか 入手の経路
医療用医薬品 含まれない 医師の処方
一般用医薬品 しみ(肝斑に限る) 薬剤師から購入

「含まれない」は効果を否定するものではなく、承認申請の際に有効性と安全性が確認された範囲に含まれていないという意味です。リスクの区分は見直されることがあるため、購入時点の表示を確認しておくと安心です。

内服で変わる幅と中止後の戻り

トラネキサム酸の内服については、続けている間と、やめた後では、指標の変化の幅が異なると報告されています。

無作為化してプラセボと比較した二重盲検の試験では、44名が登録され39名が完了し、トラネキサム酸を1日2回・3か月間内服した群で指標の低下が49%、対照群では18%であったと報告されています。

同じ試験で、内服を中止して3か月が経過した時点では、開始前と比べた指標の低下は実薬群26%、対照群19%であり、続けている間とやめた後で差の大きさが変わることがうかがえます。この試験は単施設で行われ、対象の多くがヒスパニック系の女性であり、産後や授乳中の女性、日本人を対象としたものではない点に注意が必要です。

別の系統的レビューでは、22件の試験・1,280名のデータをまとめた結果、経口投与での指標の改善が比較的大きいと報告される一方、試験ごとのばらつきが大きいことも指摘されており、消化器の症状や皮膚の刺激、月経の乱れが有害事象として挙げられています。

経口と外用を比較した50名規模の試験では、12週間後の指標の平均値に大きな差は見られず、経路によって必ず優劣がつくわけではないと考えられます。これらの数値はいずれも集団の記録であり、個人の結果を保証するものではありません。

一般用医薬品の「しみ(肝斑に限る)」

肝斑を効能とする薬は、一般用医薬品の側に承認があります。厚生労働省の区分に関する通知では、第一類医薬品の項にトラネキサム酸が掲載され、「しみ(肝斑に限る)改善薬に限る」という限定条件が付されています。つまり肝斑という効能で承認されているのは一般用医薬品の側であり、医療用製剤の効能又は効果とは範囲が異なります。

第一類医薬品は薬剤師からの情報提供を受けたうえで購入する区分であり、購入の際に授乳中であることを自分から伝えられる場面でもあります。区分の表示は見直されることがあるため、購入時点の外箱で確認することが勧められます。

手に取った薬の外箱で、効能又は効果の欄に何が書かれているかを読んでみてください。

 

産後・授乳中に確認しておくこと

薬の承認の範囲がわかったところで、産後という時期に特有の確認事項が残ります。確認すべきは、授乳との関係、血栓に関する注意、そして医療機関にどう相談するかの3点です。

この章のポイント
・授乳中の内服は自己判断しない
・産後は血栓の背景リスクが変わる
・確認する項目を整理してから相談

授乳中の内服をどう考えるか

添付文書には、授乳を続けるか中止するかは、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考えて検討すると記載されています。一方で、公的機関が公開している授乳中に安全に使用できると考えられる薬の一覧には、止血薬の分類でトラネキサム酸が掲載されています。

この2つは矛盾ではなく、添付文書は製剤ごとの注意事項の記載、一覧は相談の多い薬剤についての評価という、性質の異なる情報だと整理できます。同じ公的機関は、多くの薬は母乳に移行する量が非常に少なく赤ちゃんに影響する可能性は低いとしたうえで、薬の使用や中止は自己判断ではなく必ず医師と相談して決めるよう案内しています。

一覧への掲載は薬剤ごとの評価であり、肝斑を目的とした使用を推奨するものではない点には注意が必要です。妊婦についても、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされており、次の妊娠を考えている場合の確認事項にもなります。

血栓に関する注意と産後という時期

トラネキサム酸には血液を固まりやすくする方向に働く性質があるため、添付文書では、すでに血栓(血のかたまり)がある方や、血栓ができるおそれのある方には注意して使うよう記載されています。血栓が溶けにくくなる可能性があるためです。

ただしこれは「使ってはいけない」という禁止ではなく、注意して使うという位置づけです。使用が禁止されているのは、トロンビンという止血剤を使っている最中の方だけです。あわせて、手術後に安静を続けている方や圧迫による止血処置を受けている方についても注意が記載されています。

産後という時期の背景として、168万人を超える規模の海外のコホート研究では、血栓に関するできごとの起こりやすさを示すオッズ比が、分娩後0〜6週で10.8、7〜12週で2.2、13〜18週で1.4、19〜24週で1.0であったと報告されています。

ただしこの研究はトラネキサム酸を服用した人を対象にしたものではなく、服用によって血栓が起きることを示すものではありません。産後という時期はもともと血栓のリスクが高まる時期であり、そこに血液を固まりやすくする方向に働く薬を使うかどうかは、時期と体の状態を踏まえて医師が判断する事項になります。

医療機関に確認する5つの項目

相談の場では、薬の承認範囲や授乳との関係など、あらかじめ確認したい項目を整理しておくと話がまとまりやすくなります。

  • 使用する薬の名称と承認されている効能又は効果
  • 授乳を続ける前提で問題がないか
  • 分娩からの週数や既往をふまえた今の時期の考え方
  • どのくらいの期間続け、やめた後どうするか
  • 体調の変化が出た場合の連絡先と対応

「絶対に消えます」「副作用はありません」といった説明が返ってきた場合は、添付文書に記載された注意点と整合していない可能性があります。費用にふれる場合は、一般的な目安として示される金額に加えて、続けた場合の総額や中止後の方針まで確認しておくと安心です。

相談は治療を始めるための場に限らず、今は始めないという判断を含めて材料を得るための場でもあります。産後は体調や生活のリズムも変わりやすいため、始める時期を後ろにずらすことも選択肢の一つです。

確認したい項目を紙に書き出してから、相談の場に臨んでみてください。

 

遮光と摩擦を減らす日々のケア

薬や施術を検討するかどうかにかかわらず、今の時期に最も確実に続けられるのは日々のケアです。遮光を続けることと、肌への摩擦を減らすことが、共通する土台になります。

この章のポイント
・遮光は最も確実に続けられる土台
・紫外線だけでなく可視光にも備える
・摩擦を減らす工程を日常に組み込む

日焼け止めで発症率が下がった記録

妊婦を対象とした試験では、日焼け止めを継続して使った群で新たな肝斑の発生が少なかったと報告されています。

200名の妊婦を対象にSPF50+・UVA-PF28のブロードスペクトラムの日焼け止めを12か月間使用した試験では、完了した185名のうち新たに肝斑が生じたのは5名で、発生は2.7%でした。同じ研究者らが同じ地域・同じ時期に行った通常条件下の調査と比べて低い値と報告されています。

この比較は同時に置かれた対照群との比較ではなく、過去の調査との比較であり、無作為化された比較試験ではありません。モロッコで実施された2007年の試験であり、日本人を対象としたものでもないため、そのまま日本人の産後女性に当てはまるとは限りません。

それでも、続けることの価値がどの程度の水準で報告されているかを知る材料にはなります。産後の生活の中で続ける工夫としては、洗面所や玄関などいつも通る場所に日焼け止めを置く、子どもと一緒に塗る時間を決めるといった方法が一例として考えられます。

紫外線だけでなく可視光にも備える

肌の色づきに関わるのは紫外線だけでなく、可視光の一部も関わっているとの指摘があります。

紫外線はUVBが290〜320nm、UVAが320〜400nmとされ、可視光の短波長側は420〜470nm程度とされています。可視光のうちエネルギーの高い領域は、光を感じ取る仕組みを介してメラニンをつくる細胞の働きを刺激し、色素の産生を促すと考えられています。

近年の研究では、青色や緑色の光も肌の色調によって異なる形でメラニンの産生を刺激しうると示唆されており、紫外線だけを想定した対策では届かない範囲があると考えられます。

紫外線と可視光の違いを整理すると、次のようになります。

光の種類 波長のめやす 備えの手段
UVB 290〜320nm SPFの表示を確認
UVA 320〜400nm ブロードスペクトラム表記
可視光 420〜470nm 酸化鉄配合の色付き製品

可視光に関する記述はレビューでの整理であり、日常生活でどこまで差が出るかを定量したものではありません。対応としては、二酸化チタンや酸化亜鉛といった肌への吸収が少ないとされる成分が、安全性の観点から選ばれやすい傾向にあります。

日光を浴びる20分ほど前に塗り、2時間ごとや汗をかいた後に塗り直すことが勧められています。日中は日陰を選ぶ、帽子や日傘、サングラスを併用することも助けになります。

摩擦を減らすスキンケアの手順

肝斑には血管や炎症の関与も指摘されており、色素だけの問題として扱わない視点が助けになります。摩擦が肝斑を悪化させることを直接示した研究は公表されておらず、「こすると濃くなる」と断定はできませんが、肌への刺激を減らすことは一般的な留意点として考えられます。

  1. 洗顔料は泡立ててから顔にのせ、指でこすらない
  2. すすぎは体温に近いぬるま湯で行う
  3. タオルは押し当てて水分を取り、こすらない
  4. 化粧水や乳液は手のひらで温めてから押さえるように広げる
  5. クレンジングは長く時間をかけずに終える

育児の合間に短時間で済ませたい場面は多いため、工程を増やすのではなく摩擦の回数を減らす方向で組み立てると続けやすくなります。

睡眠不足やストレスも色素斑に関わる要因として挙げられていますが、産後にすべてを整えることは現実的でない場合が多く、整えられないこと自体を問題と考える必要はありません。外用剤の成分の中には全身への吸収の程度が異なるとされるものもあり、産後や授乳中の使用は自己判断せず確認しておくと安心です。

今日の洗顔とタオルの当て方を1つだけ変えて、記録の1枚目と一緒に始めてみてください。

 

産後の肝斑についてよくある質問

産後の肝斑について、特に確認されることが多い5つの質問にお答えします。

産後の肝斑は自然に消えますか?

妊娠に伴う場合は出産後に良くなってくることが多いとされますが、期間を示す確かなデータはなく、経過を記録して確かめることが勧められます。

産後に増えたシミが肝斑かどうかはどう見分けますか?

左右対称で輪郭がぼやけ、目の周囲を避ける分布かを鏡で確認し、当てはまっても確定は診察で行うことが勧められます。

授乳中にトラネキサム酸を飲んでも問題ありませんか?

添付文書は有益性を考慮して継続や中止を検討するとし、公的機関の一覧にも掲載がありますが、肝斑目的の使用を勧めるものではなく、自己判断せず医師に確認してください。

産後の肝斑にレーザーを当てても大丈夫ですか?

肝斑にはレーザー治療が無効とされ濃くなる可能性も指摘されているため、まず肝斑かどうかの見分けが優先されます。

肝斑の内服はやめたらまた濃くなりますか?

ある試験では中止3か月後に効果の差が縮まっており、続けている間とやめた後で変化の幅が異なるという結果が出ています。

 

まとめ

妊娠に伴う肝斑は出産後に良くなってくることが多いとされていますが、消えるまでの期間は断定できません。断定できないことは何もできないという意味ではなく、自分で経過を測る方法があるという意味です。

肝斑という効能で承認されているのは一般用医薬品の側であり、医療用製剤の効能又は効果には含まれていないという構造も、薬を選ぶ際の判断材料になります。産後は授乳と分娩からの時期という2つの条件が加わるため、添付文書の記載や公的機関の情報を確認してから決めることが現実的です。

今日からできることとしては、記録を1枚残すこと、遮光を続けること、確認したい項目を書き出しておくことの3つが挙げられます。ご自身の色素斑が肝斑らしい所見に当てはまるか、今の時期に何を始めてよいかを一緒に整理したい場合は、福岡院のカウンセリングもご活用いただけます。

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参考文献・出典

  • トランサミン錠250mg・500mg 添付文書(第一三共株式会社。効能・効果は全身性出血傾向、局所異常出血、湿疹・蕁麻疹等にともなう紅斑・腫脹・そう痒、扁桃炎・咽喉頭炎の症状、口内炎の口内痛。肝斑・しみは含まれない。用法・用量は1日750〜2,000mgを3〜4回に分割。禁忌はトロンビン投与中の患者。妊婦は有益性が危険性を上回る場合のみ投与、授乳婦は継続・中止を検討)
  • 厚生労働省「一般用医薬品の区分リストについて」の一部改正について(2020年。第一類医薬品にトラネキサム酸を掲載、「しみ(肝斑に限る)改善薬に限る」の限定条件)
  • 国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」および「授乳と薬について知りたい方へ」(止血薬の分類にトラネキサム酸を掲載。薬の使用・中止は医師と相談して決めるよう案内)
  • 第一三共ヘルスケア「肝斑information 簡単!肝斑チェック」(肝斑は頬骨のあたりに左右対称に生じ、目の周囲を避けて分布、輪郭がぼやけてもやっと広がる)
  • 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS「肝斑(いわゆる「しみ」)」(2021年。肝斑の治療としてビタミンCとトラネキサム酸の内服を記載)
  • Lakhdar H ほか「Evaluation of the effectiveness of a broad-spectrum sunscreen in the prevention of chloasma in pregnant women」Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology(2007年。モロッコの妊婦200名にSPF50+・UVA-PF28の日焼け止めを12か月使用。完了185名のうち新規発症5名・2.7%。同時対照群なし)
  • Del Rosario E ほか「Randomized, placebo-controlled, double-blind study of oral tranexamic acid in the treatment of moderate-to-severe melasma」Journal of the American Academy of Dermatology(2018年。44名登録・39名完了。250mgを1日2回3か月内服でmMASI 49%低下、対照群18%。中止3か月後は26%対19%。テキサス単施設、対象の多くがヒスパニック系女性)
  • Calacattawi R ほか「Tranexamic acid as a therapeutic option for melasma management: meta-analysis and systematic review of randomized controlled trials」Journal of Dermatological Treatment(2024年。22試験・1,280名)
  • Heydari B ほか「Randomized Clinical Trial on the Efficacy of Oral Tranexamic Acid Versus Topical Tranexamic Acid in Treatment of Melasma」Journal of Cosmetic Dermatology(2025年。50名、12週間)
  • Zhao L ほか「Prevention of Melasma During Pregnancy: Risk Factors and Photoprotection-Focused Strategies」Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology(2024年)
  • Lim HW ほか「Photoprotection in pregnancy: addressing safety concerns and optimizing skin health」Frontiers in Medicine(2025年)
  • Sathe NC, Launico MV「Melasma」StatPearls(2026年更新)
  • Kamel H ほか「Risk of a Thrombotic Event after the 6-Week Postpartum Period」New England Journal of Medicine(2014年。カリフォルニア州の1,687,930名を対象。血栓イベントのオッズ比は分娩後0〜6週10.8、7〜12週2.2。12週以降は有意な上昇なし)
  • Bozzo P ほか「Safety of skin care products during pregnancy」Canadian Family Physician(2011年)
  • 公益社団法人日本皮膚科学会「ケミカルピーリング Q4」

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