リップアートメイクの直後でも食事はとれますが、最初の一口は麻酔が切れて唇の感覚が戻ってからにし、その後もかさぶたや皮むけが落ち着くまでは、温度・味の刺激・唇への接触の3点で食べるものと食べ方を選ぶのが基本です。
「何時間後から」「何日間」という数字には根拠となる調査が示されていないため、時間ではなく唇の状態で段階を決めます。施術していない健康な日本人女性の唇でも、頬に比べて水分がほぼ3倍逃げやすいと報告されており、処置の直後は熱い・辛い・酸っぱい・しょっぱいものがしみやすくなります。
施術を受けた医療機関から個別の指示がある場合は、そちらを優先してください。以下では、食べるものの選び方と食べ方、制限を解く段階を順に説明します。唇への処置は口唇ヘルペスが再発するきっかけにもなりうるため、ヘルペスの前ぶれ、施術を見送る人、医療機関に連絡する目安もあわせて確認します。

国立琉球大学医学部医学科を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2024年アラジン美容クリニックに入職。
特にクマ取り治療では、年間症例数3,000件以上を誇るスペシャリストである。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様の悩みに真剣に向き合う。
直後の食事は麻酔が切れてから、4つの軸で選ぶ
リップアートメイクを受けた当日も、食事そのものを抜く必要はありません。最初の一口は麻酔が切れて感覚が戻ってからにし、その後は温度・味の刺激・唇への接触の3点で選びます。麻酔の残りと合わせた4つの軸で考えれば、料理の名前にかかわらず自分で判断できます。この章では、4つの軸と唇が弱い理由、最初の一口の前の手順を確認します。
この章のポイント
・最初の一口は麻酔が切れて感覚が戻ってから
・温度・味の刺激・唇への接触の3点で選ぶ
・時間数ではなく唇の状態で段階を決める
判断の基準にするのは料理の名前ではなく、次の4つの軸です。
| 軸 | 起きること | 直後の選び方 | 緩めてよい目安 |
|---|---|---|---|
| 麻酔の残り | 熱さや噛み傷に気づきにくい | 常温の水分・噛まないもの | 感覚が戻ったら |
| 温度 | 熱いものがしみる・痛む | 人肌まで冷ます | しみなくなったら |
| 味の刺激 | 辛さ・酸・塩がしみる | 薄味・だし味にする | 皮むけ後に少しずつ |
| 唇への接触 | こすると表面を傷める | 小さな一口・押さえて拭く | 表面が落ち着いたら |
目安が時間ではなく唇の状態なのは、「1〜3時間後」「1週間」といった数字に根拠となる調査がなく、インターネットで見かける目安も情報によって食い違うためです。施術を受けた医療機関から個別の指示があれば、唇を診たうえでの判断なので、そちらに従ってください。
麻酔が残る間は熱いものと噛む食事を待つ
麻酔が効いている間は唇の感覚が鈍く、熱さや噛んだ痛みに気づきにくいため、熱い飲み物と噛みごたえのある食事は感覚が戻るまで待ちます。表面麻酔のクリームは塗った部分の感覚を一時的に鈍らせ、注射で麻酔をした場合は、しびれがより長く残ることがあります。感覚が鈍いまま熱い汁物を口にするとやけどに気づくのが遅れ、唇や頬の内側を噛んでも痛みで止まれません。この間にとるなら、常温の水や人肌に冷ました飲み物を少量ずつにします。
国内で承認(国が有効性と安全性を審査し、製造販売を認めること)されている表面麻酔のクリームは、レーザーを当てるときと注射針を刺すときの痛みを和らげる目的で認められたものです。アートメイクの痛みを和らげる使い方は、国が認めた使い道に含まれていません。また、薬の製造販売会社が国の承認を受けて作成する公式の説明書(添付文書)では、傷のある皮膚と粘膜には使わないこととされています。施術中は針で唇の表面に細かな傷ができるため、どの麻酔をどの範囲に使うかは、施術を受ける医療機関に事前に確かめておきましょう。
唇が食事の刺激を受けやすい理由
唇の赤い部分は、もともと外からの刺激を防ぐ力と水分を保つ力が弱い部位です。顔の中で口の粘膜が外に出たままになっている唯一の場所とされ、汗腺や毛穴がなく、表面の角層も薄いつくりをしています。
健康な日本人女性303人(21〜80歳)を冬に測定した研究では、唇から逃げる水分の量は頬のほぼ3倍、表面の潤いの指標は頬の約3分の1で、いずれも統計的に意味のある差でした。表面の細胞が十分にでき上がっていないことが原因と考察されています。施術していない唇の値で、男性は含まれていません。
施術直後はこの弱い部位に針の処置が加わり、1日3回の食事で温度・味・摩擦の刺激を受けます。色素は表面より下のごく浅い層に入れられるため、食べ物が触れただけで落ちるものではありませんが、治る途中の表面をこすって傷めると、仕上がりに影響する可能性があります。
最初の一口の前に試す3ステップ
最初の食事を始めてよいかは、一例として次の3ステップで自宅で確かめられます。診断ではなく、目の前の食事をどうするかを自分で決めるための手順です。
- 手を洗って鏡で唇を見て、にじみや出血、水ぶくれがないかを確かめ、正面から写真を1枚撮って時刻を記録する
- 麻酔をした範囲のうち色を入れていない部分(唇の輪郭のすぐ外側など)に清潔なスプーンの背を軽く当て、ひんやり感じるかを確かめる(麻酔をした範囲は、施術を受けた医療機関で確かめておく)
- 常温の水をスプーンでひと口含み、しみなければ人肌に冷ました薄味のものをひと口試す
冷たさを感じにくい、または唇にしびれや厚ぼったい感じが残っている場合は麻酔が残っているので、熱いものと噛む食事はもう少し待ちます。しみたり痛みが強まったりしたら温度を下げるか料理を後ろにずらし、にじみや出血が止まらない、腫れが急に強くなるといった場合は、食事を中断して施術を受けた医療機関に連絡します。
最初の食事の前に、この3ステップと写真の記録を一度行ってから献立を決めてください。
避けたい食べ物・飲み物とその理由
最初の一口を決めたら、次に迷うのは何を避けるかです。避けたいのは熱いもの、辛いもの、酸っぱいもの、しょっぱいもの、そしてお酒で、前の4つは同じ仕組みでしみるため、リストにない料理も「しみるかどうか」で判定できます。一方で、カフェインや色の濃い料理、冷たいもの、揚げ物を禁止する根拠は示されていません。守る項目を絞れるよう、それぞれの理由を確認します。
この章のポイント
・熱い・辛い・酸っぱい・しょっぱいものはしみやすい
・お酒は少なくとも腫れやにじみが引くまで控える
・コーヒーやカレーは温度と拭き方に気をつける
熱い・辛い・酸っぱいものがしみる理由
熱さと唐辛子の辛さ、酸っぱさは、体の中で同じ「熱さと痛みのセンサー」に受け取られるため、治る途中の唇ではまとめてしみやすくなります。このセンサーは皮膚や粘膜の神経にあり、熱だけでなく唐辛子の辛み成分や酸にも反応します。炎症があるとセンサーが反応しやすくなるので、ふだんは平気な温度や味でもピリッとした痛みとして感じます。塩気の強いものが傷にしみるのも、治る途中の表面が敏感になっているためです。
ただし、これは痛みの仕組みであって、熱いものを食べると色が抜けることを示すものではありません。判断は温度計ではなく、口に入れてしみるかどうかで行います。具体的には、ラーメンや鍋などの熱い汁物、キムチや麻婆豆腐などの辛い料理、柑橘類や酢の物、トマトソースなどの酸味の強いもの、漬物や塩辛のような塩気の強いものが当てはまります。汁物は人肌まで冷まし、辛い料理や酢の物は唇が落ち着くまで別の料理に置き換えると、食事の量を減らさずに済みます。
お酒は控え、コーヒーは冷まして飲む
お酒は血管を広げて血の巡りを増やし、腫れやにじみを強めやすいため、少なくとも腫れとにじみが引くまでは控え、再開はしみる料理と同じく最後にします。コーヒーや紅茶は、冷ましてから飲めば差し支えないと考えられます。
アートメイクについて、禁酒の日数を示した研究や公的な定めはありません。参考として、唇への注入で承認されたヒアルロン酸注入材の公式な説明書は、処置後24時間は激しい運動、日光や高温に長く当たること、飲酒を避けるよう定めています。別の処置の定めなので、アートメイクでは時間数にこだわらず、腫れやにじみが引くまで控えます。
ヘルペスの薬などを処方されている場合、飲酒してよいかは処方した医師に確かめてください。コーヒーや紅茶のカフェインが治りや色持ちを悪くするという研究は示されておらず、問題になるのは温度なので、ホットは人肌まで冷ますか、アイスで飲めば唇への負担は小さくなります。冷たい飲み物も、しみなければ控える必要はありません。
色の濃い料理と唇に当たる料理の扱い
カレーやミートソース、赤ワインで色素に色がつく、あるいは色が抜けるという研究は示されておらず、気をつけたいのは口の周りに付いたものをこすって拭くときの摩擦です。
硬いものやぽろぽろ崩れるもの、たとえばせんべいやフランスパン、スナック菓子は、治る途中の唇をこすりやすくなります。ハンバーガーや大きなおにぎりのように大きくかぶりつく料理は、小さく切ってから口に運びます。麺類はすすると唇がすぼまって汁も付きやすいので、短く切ってスプーンにのせると唇に当たりません。揚げ物や脂っこい料理そのものを禁止する根拠はありませんが、油やソースが唇に付くと拭く回数が増えるため、当日は控えめにしてもよいでしょう。
迷った料理は、しみるか、唇に当たるか、食べたあとに拭く必要があるかの3つを自問してから選んでみてください。
食べやすいものと唇に触れない食べ方
避けるものの理由が分かれば、食べやすいものは同じ軸から選べます。基準は、常温から人肌に冷ませる、味が薄い、小さな一口で食べられる、の3つです。同じ料理でも食べ方と食後の拭き方で唇への負担は変わるため、食事の量は減らさずに中身と食べ方を置き換えます。あわせて、栄養で色持ちがよくなるのかという疑問にも、研究で分かっている範囲で答えます。
この章のポイント
・人肌・薄味・小さな一口の3つを基準に選ぶ
・スプーンで舌に運び、食後は押さえて拭く
・栄養で色持ちがよくなると示した研究はない
当日から選びやすい食べ物
当日から選びやすいのは、人肌まで冷ませて味が薄く、噛む回数と口の開け閉めが少なくて済む食べ物です。たとえば次のようなものが当てはまります。
- 冷ましたおかゆや雑炊
- 豆腐や茶碗蒸し
- 短く切って冷ましたうどん
- ヨーグルトやバナナ
- 冷ましたポタージュ
- やわらかく煮た野菜や魚
これらは唇への負担が少ない選択肢であって、食べれば色の定着がよくなるという意味ではありません。食べにくい時期が数日続くことも考えられるため、施術の前日までにレトルトのおかゆやヨーグルトなどを買い置きしておくと、当日に買い物で迷わず、唇を休めることに専念できます。
唇に触れさせない食べ方と食後の拭き方
一口を小さくしてスプーンで舌の上に運び、食後はこすらずに押さえて拭くのが基本です。大きく口を開けると、治る途中の唇が引き伸ばされます。ストローは唇に触れる面を減らせる一方、吸うときに口をすぼめるため、腫れが強い間はコップの縁を唇に当てずに少量ずつ流し込む方法もあります。どちらが楽かは唇の状態で変わるので、つっぱりや痛みが少ないほうを選びます。
食後は口をすすぎ、清潔なティッシュやガーゼで押さえるように水分を取り、指示された塗り薬があれば拭いたあとに指示どおり使います。唇をなめると乾燥が進むため避け、歯みがきは続けてかまいませんが、歯ブラシや歯みがき粉が唇に当たらないようにします。米国の皮膚科医がアートメイクに関するこれまでの報告をまとめた論文(総説)でも、合併症は衛生管理とアフターケアが守られない場合に増えうると指摘されています。
口唇ヘルペスのウイルスは、唾液や、ウイルスが付いた手指・食器などを介してうつるとされ、症状がなくても唾液にウイルスが出ていることがあります。治りかけの唇を守るため、食器やストロー、ペットボトルの回し飲みやキスは、表面が落ち着くまで控えましょう。
栄養で色持ちは変わるのか
特定の栄養素で色持ちや定着がよくなることを示した研究はありません。ビタミンCはコラーゲンを作るのに欠かせない栄養素ですが、ビタミンCと傷の治りに関する18件の研究をまとめた分析では、補給で治りがよくなったのは主に床ずれ(褥瘡)でした。研究の多くは少人数で、複数の栄養を同時に与えていたり、もとのビタミンCの量を測っていなかったりする限界もありました。アートメイク後の唇や色素を調べた研究ではないため、サプリメントを足せば色持ちがよくなるとは言えません。
食べにくいからと食事を抜くと傷を治す体の材料が不足するため、量を減らすのではなく、豆腐や卵、やわらかく煮た魚でたんぱく質を、煮た野菜やポタージュで野菜を補います。唇が痛いと飲む量も減りがちなので、常温の水やお茶で水分もこまめにとりましょう。
糖尿病の治療中の人は、食事の量が減ることに注意が必要です。インスリンや血糖を下げる飲み薬を使っている人は低血糖を起こすおそれがあり、SGLT2阻害薬という種類の薬を使っている人は、食事がほとんどとれない状態が続くと、血液が酸性に傾くケトアシドーシスを起こすことがあります。施術の時間帯と当日の薬の使い方は、事前に主治医に相談してください。
今日の夕食から、主食・主菜・野菜をやわらかい料理で1品ずつそろえてみてください。
食事の制限を解く時期と口唇ヘルペスへの備え
食べ方が決まったら、次は制限をいつまで続けるかです。制限は日数ではなく唇の状態に合わせて段階的に解き、辛いもの・熱いもの・お酒は最後に戻します。あわせて口唇ヘルペスの前ぶれと、薬を飲むときの食事の注意を確認します。
この章のポイント
・制限は日数でなく唇の状態で段階的に解く
・ピリピリ・ムズムズはヘルペスの前ぶれの可能性
・施術前の予防内服は国が認めた使い道にない
唇の状態ごとの食事の目安と、並行して守ることは次のとおりです。
| 唇の状態 | 食事の目安 | 並行して守ること |
|---|---|---|
| 麻酔が残る間 | 常温の水分・噛まないもの | 唇に触れない |
| 腫れ・にじみがある間 | 人肌・薄味・小さな一口 | 押さえて拭く・なめない |
| かさぶた・皮むけの間 | しみないものから戻す | 皮をはがさない |
| 皮むけが終わった後 | 辛い・熱い・お酒は最後に | 紫外線を避ける |
状態が切り替わる日数には個人差があり、一律の目安は示されていません。
唇の状態で決める食事の段階
次の段階に進んでよいかは、ひと口試してしみないか、腫れやにじみが前日より弱まっているかという変化の向きで決めます。
スウェーデンで入れ墨のある約2,600人に尋ねた調査では、施術後1か月以内に何らかの症状があった人は約4割で、傷やかさぶた22%、赤み18%、かゆみ16%、腫れ15%が多く挙がりました。化粧目的の入れ墨だけの約110人は装飾の入れ墨の人より症状の報告が多く、年齢などをそろえた解析では統計的に意味のある差でした。体の入れ墨を含む自己申告の値で唇に限りませんが、この時期の赤みや腫れ、かさぶたは珍しくありません。
かさぶたや皮むけは、無理にはがすと色むらの原因になる可能性があるため、自然にはがれるのを待ちます。
口唇ヘルペスの前ぶれと普通の経過の違い
ムズムズ・ピリピリした違和感や焼けるような感じ、かゆみが先に出て、そのあと小さな水ぶくれが集まって出てくるのが口唇ヘルペスの特徴で、日ごとに弱まるつっぱりや皮むけとは経過が異なります。
国内では、単純ヘルペスウイルスに感染したことを示す抗体を持つ人は、成人でも40%程度とされます。ウイルスは神経に潜み、発熱や紫外線、歯科治療などの刺激やストレスで再発します。歯科治療が誘因に挙げられているように、唇に針で処置をするアートメイクも再発のきっかけになりうると考えられます。
リップアートメイクのあとにヘルペスが出る割合を調べた研究は限られていますが、単純ヘルペスの再発は化粧目的の入れ墨の合併症として知られています。前ぶれや水ぶくれに気づいたら、市販の塗り薬で様子を見ずに施術を受けた医療機関へ連絡してください。施術後の唇では感染やかぶれとの見分けが必要なため、これは診断ではなく連絡の目安です。
ヘルペスの薬の国内での扱いと食事
口唇ヘルペスの飲み薬は治療のほか、再発をくり返す人が前ぶれで飲む方法が国内で認められ、施術前の予防は含まれません。
予防の飲み薬と前ぶれで飲む薬
英国の美容医療の専門家の指針は、施術後にヘルペスが出た人に、唇へのフィラー注入など皮膚を傷つける施術の前の予防内服を勧めていますが、アートメイクは名指ししていません。資金提供や利益相反はないとされる一方、著者には施術を行う側の医師が含まれます。
国内のバラシクロビル、アシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビルで発症を抑える目的が認められているのは、造血幹細胞移植のときと性器ヘルペスの再発を抑える場合だけです。施術前に処方されれば承認範囲外で保険の効かない使い方となり、健康被害が出ても公的な救済制度の対象外となりえます。
前ぶれで飲む方法はPITと呼ばれ、再発をくり返し前ぶれを自分で判断できる人に、ファムシクロビルとアメナメビルで認められています。ファムシクロビルでは、年におおむね3回以上再発するといった経過が処方の目安とされています。どちらも前ぶれが出てから6時間以内に飲む薬で、アメナメビルは口唇ヘルペスでは水ぶくれなどが出る前に飲むこととされています。ファムシクロビルは、妊娠中や妊娠の可能性がある人は飲まないことを前提に処方される薬です。妊娠中や授乳中に前ぶれが出たときは、手元の薬を飲む前に処方した医師に相談してください。用量や日数、処方の可否は医師が判断します。
薬を飲むときの食事の注意
アメナメビルは、空腹時に飲むと血液中の薬の量が食後のおよそ半分になったと報告されているため食後に飲み、食事がとれないときも軽食をとってから飲みます。グレープフルーツジュースは血中濃度を上げるおそれがあるため避けます。バラシクロビルは脱水を起こしやすい人では水分補給が必要とされ、唇が痛くても飲み物を控えすぎないようにします。
いずれの薬も成分にアレルギーを起こしたことがある人は使えず、バラシクロビルとアシクロビルは互いの成分へのアレルギーも禁忌(使ってはいけない条件)です。アメナメビルは結核などの薬リファンピシンとも併用できません。主な副作用は頭痛や吐き気、下痢などで、重い副作用として、ほかの3成分では腎臓の障害や意識障害が、アメナメビルでは多形紅斑という皮膚の症状が記載されています。
口唇ヘルペスをくり返したことがある人は、次の施術やリタッチの予約のときに、その回数と前ぶれの有無を伝えておいてください。
受けられない人と、様子を見ずに連絡する変化
最後は、施術を見送るべきときと、経過の途中で連絡すべき変化です。リップのアートメイクは国の通知で医師が行うべき医行為とされ、看護師が行う場合も医師の指示が必要なため、施術後の判断も医療機関の中で行います。延期すべき時期、連絡の目安、確かめておきたい項目を順に見ていきます。
この章のポイント
・ヘルペスの前ぶれや唇の炎症がある時期は延期
・広がる腫れ、強まる痛み、膿、熱は連絡の目安
・施術者の資格と使う薬、時間外の連絡先を確かめる
施術を見送る人・事前に申告が必要な人
口唇ヘルペスの前ぶれや水ぶくれがある時期と、唇やその周りに炎症・傷・感染がある時期は施術を延期し、持病や体質によっては事前に申告して医師の判断を受けます。
延期する・申告する状態
先述の英国の指針は、前ぶれや病変があるときや、2週間以内に強い日差しなど再発の誘因にさらされそうなときは、誘因が去り、症状が完全に治まるまで美容施術を延期するよう求めています。次に当てはまる人は、予約の段階で申告してください。
- 妊娠中・授乳中
- 歯科の麻酔と同じ系統の麻酔薬でのアレルギー歴
- メトヘモグロビン血症の指摘歴
- 血をさらさらにする薬を服用中
- ケロイドができやすい体質
- 免疫の働きを抑える治療中
- 口唇ヘルペスをくり返している
表面麻酔のクリームは、成分や歯科の麻酔と同じ系統の麻酔薬(アミド型局所麻酔薬)にアレルギーを起こしたことがある人と、メトヘモグロビン血症(血液が酸素を運びにくくなる状態)の人には禁忌です。主な副作用は塗った部分の赤みや白っぽくなる変化で、重い副作用としてショック、意識障害やけいれん、メトヘモグロビン血症も記載されています。アートメイクの色素には薬のような公式な説明書がなく、使ってはいけない人の基準も定められていないため、受けられるかどうかは診察した医師が判断します。
唇への注入治療との関係
唇の色ではなくボリュームが目的なら、唇への注入で承認されたヒアルロン酸注入材という別の選択肢があります。成分や同じ系統の麻酔薬、製造に由来する微量のたんぱく質にアレルギーを起こしたことがある人は使えません。承認時の米国の試験では、処置後30日間の日誌で腫れや押したときの痛みを9割前後の人が記録し、口のヘルペスも処置に関連した不調として記載されています。まれに注入材が血管に入ったり血管を圧迫したりすることで、皮膚の壊死のほか、一時的または回復しない失明や脳卒中が起こりうるとされています。
先述の米国の総説は、注入治療や局所麻酔を受けた皮膚ではアートメイクの位置がずれたり見え方が変わったりすることがあると指摘しており、両方を考えている人は順番と間隔を医師と相談してください。唇の色を整えるだけなら、毎日の口紅やリップティントでも足ります。
様子を見ずに連絡する変化
腫れや痛みが日ごとに弱まっていれば経過の範囲と考えられ、広がる・強まる変化や膿、熱、集まった水ぶくれがあれば、様子を見ずに施術を受けた医療機関へ連絡します。次の表は診断ではなく、連絡するかどうかの目安です。
| 症状 | 経過の範囲 | 連絡する目安 |
|---|---|---|
| 腫れ・赤み | 日ごとに引いていく | 日ごとに広がる |
| 痛み | しみる程度で弱まる | 強まる・脈打つ痛み |
| 水ぶくれ・ぶつぶつ | 出ない | 集まって出る・前ぶれ |
| にじみ・膿 | 当日のにじみ | 膿・においがある |
| 全身の症状 | なし | 発熱・だるさ |
表のほか、皮むけが終わったあとにかゆみを伴う赤いぶつぶつや盛り上がりが出てきた場合も連絡します。化粧目的の入れ墨では、単純ヘルペスなどの感染のほかに、時間がたってから出るアレルギー反応も合併症として知られており、その可能性があるためです。
一例として、最初の一口の前と同じ時刻・角度で毎日写真を撮っておくと、連絡の際に変化を見せられます。皮をはがす、水ぶくれをつぶす、市販の消毒薬や軟膏を自己判断で塗るといったことは避けてください。
施術を受けた医療機関に確かめておくこと
施術者の資格、使う色素と麻酔薬、異変が出たときの連絡体制は、施術を受けた医療機関に確かめておきたい項目です。
- 施術者は医師か、医師の指示を受けた看護師か
- 色素と麻酔薬の名前と、国の承認の有無
- 承認された使い道の範囲内での使用か
- 食事・保湿・洗顔の具体的な指示
- 異変時の連絡先と時間外の対応
- ヘルペスをくり返す人への薬の方針
国の注意喚起も、美容目的の自由診療で使う薬や材料には承認などを受けていないものがあるとして、使う薬などを自分でも説明できるか、リスクや副作用を知って納得したか、ほかの方法の説明も受けたか、今すぐ必要かを確かめるよう呼びかけています。公的な相談窓口には、消費者ホットライン188と各地の医療安全支援センターがあります。医療機関の指示が一般的な目安と違う場合は、唇の状態を診たうえでの判断なので、その指示に従ってください。
リップアートメイク直後の食事についてよくある質問
施術当日の食事や飲み物、唇の違和感について、迷いやすい質問に答えます。
リップアートメイクの当日、食事は何時間後からできますか?
何時間後という根拠のある目安は示されておらず、麻酔が切れて唇の感覚が戻ってからが目安です。常温の水をひと口含み、しみないか試してから始めてください。
施術のあと、お酒はいつから飲めますか?
アートメイクについて日数を示した定めはなく、少なくとも腫れやにじみが引くまでは控えるのが無難です。施術を受けた医療機関から指示があれば、そちらに従ってください。
カレーやコーヒーで色素に色がつくことはありますか?
色がつく、色が抜けるという研究は示されていません。気をつけたいのは口の周りを拭くときの摩擦で、こすらず押さえて拭き、コーヒーは冷ましてから飲んでください。
ストローを使ったほうが唇にやさしいですか?
唇に触れる面は減りますが、吸うときに口をすぼめるため、一概にやさしいとは言えません。腫れが強い間は、コップの縁を唇に当てずに少量ずつ流し込む方法もあります。
唇がピリピリ・ムズムズするのはヘルペスの前ぶれですか?
口唇ヘルペスの前ぶれの可能性があるため、市販薬で様子を見ずに、早めに施術を受けた医療機関へ連絡してください。小さな水ぶくれが集まって出てきた場合も同様です。
まとめ
リップアートメイクの直後は、唇のしびれが消え、麻酔をした部分にスプーンの背を当てて冷たさを感じるかで感覚が戻ったことを確かめ、常温の水でしみないかを試してから最初の一口をとります。その後は温度・味の刺激・唇への接触の3点で料理を選び、迷ったら「しみるか、唇に当たるか、拭く必要があるか」で判断します。制限は日数ではなく、腫れ・にじみ、かさぶた・皮むけという唇の状態に合わせて段階的に解き、辛いもの・熱いもの・お酒は最後に戻します。
並行して、ピリピリ・ムズムズした前ぶれや集まった水ぶくれ、日ごとに広がる腫れ、強まる痛み、膿や熱に気づいたら、様子を見ずに施術を受けた医療機関へ連絡してください。個別の指示がある場合は、その指示が一般的な目安より優先します。唇の状態や薬の飲み合わせで判断に迷うときは、福岡院のカウンセリングで医師に相談できます。
アラジン美容クリニック福岡院では、「ウソのない美容医療の実現」をモットーに、患者様お一人ひとりの美のお悩みに真摯に向き合い、最適な治療をご提案しております。無駄な施術を勧めることなく、症状の根本的な原因にアプローチし、患者様の理想を実現するお手伝いをいたします。
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参考文献・出典
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