唇にヒアルロン酸を入れたあとにほうれい線が目立つと感じても、唇の注入でほうれい線そのものが深くなったことを測った研究はありません。
目立って感じる理由として考えられるのは、注入後の腫れやしこりで口元の形が変わること、ヒアルロン酸が狙った位置の外へ広がること、唇が薄くなる年代とほうれい線が深まる年代が重なることの3つです。唇の腫れやしこりは1か月近く残ることがあるため、見分けるのは注入から1か月後に、施術前と同じ条件で撮った写真と比べるのが目安です。
ほうれい線にも注入を考える場合は、国が使い道を審査して認めた承認品が唇用とほうれい線用で分かれていることと、ほうれい線は唇より失明などの危険度が高い区分に置かれていることを先に知っておく必要があります。ここでは、3つの理由の見分け方と原因ごとの対処、追加で注入する前に確かめることまで順に説明します。

国立琉球大学医学部医学科を卒業。国内大手美容クリニックなどで院長を歴任し、2024年アラジン美容クリニックに入職。
特にクマ取り治療では、年間症例数3,000件以上を誇るスペシャリストである。「嘘のない美容医療の実現へ」をモットーに、患者様の悩みに真剣に向き合う。
唇の注入でほうれい線が深くなると示した研究はない
唇に入れたヒアルロン酸がほうれい線そのものを深くしたことを測った研究はありません。ほうれい線は頬側の変化で深まる線で、唇のヒアルロン酸は主に唇の筋の中に入っていたことが超音波の研究で示されています。線ができる仕組みと、ヒアルロン酸がとどまる位置を知っておくと、目立って感じる理由を分けて考えやすくなります。
この章のポイント
・ほうれい線は頬側の変化で深まる線
・唇のヒアルロン酸は主に唇の筋の中に入っていた
・深くなったことを測った研究はない
ほうれい線は頬側の変化で深まる線
ほうれい線は、主に線より上の頬の組織が下がったり、唇を引き上げる筋が皮膚を引き込んだりして深まる線です。施術を行う医師らによる総説は、ほうれい線の成り立ちを3つの型に分けて説明しています。
1つ目は、小鼻の脇の骨の土台が引っ込み、線の下側の脂肪が少ない型です。2つ目は、線より下の皮膚が口の周りの筋にしっかり付いているのに対し、線より上の頬の脂肪はゆるく付いて下がる型で、年齢とともに線の上の脂肪は大きく、下の脂肪は小さくなるとされています。3つ目は、唇を引き上げる筋の線維が線の近くの皮膚に付いていて、笑うと皮膚が引き込まれる型です。
最も多いのは2つ目と3つ目の型が重なったもので、いずれも測った数値ではなく解剖の知見を整理したものです。唇はこの線の内側、つまり口の周りの筋に固定された側にあり、線を深めるのは主に外側の頬の脂肪の下がりや、筋による皮膚の引き込みだと考えられます。
唇のヒアルロン酸は唇の筋の中に入りやすい
唇に入れたヒアルロン酸は、多くが唇の筋の中に入っていたと報告されています。唇への使用が国内で承認されている製品の添付文書(製造販売業者が法律に基づいて作成し、製品に添える公式の説明書)では、使用目的に唇の粘膜内または皮下への注入による唇のボリュームアップが含まれます。承認時の試験で注入したのは唇の赤い部分や輪郭、鼻の下のくぼみ、口の周りのしわ、口角などで、ほうれい線は含まれていません。
唇の注入を超音波で調べた英国とオランダの横断研究(ある時点で多くの人を一度に調べる研究)では、126人のうち52人に唇の注入歴がありました。唇の皮下の層は上下とも薄く、注入を受けた人の多くでヒアルロン酸は唇を取り巻く筋(口輪筋)の中に入っていました。
この研究が調べたのは唇の中の層で、ほうれい線の部位までヒアルロン酸が届いたかは調べていません。著者の1人は注入材メーカーの顧問を務めています。唇の注入の前後でほうれい線の深さを測った研究は報告されていません。唇用の承認品の公式の説明書は、報告されている好ましくない出来事の一つに「しわや傷あとが深くなること」も挙げていますが、どの部位のしわか、どのくらいの頻度かは示されていません。深くなるとも深くならないとも言い切れないのが現状です。
目立つと感じる線が、小鼻の脇から口角へ伸びるほうれい線そのものか、唇の輪郭のすぐ外側の変化かを、鏡で見分けるところから始められます。
目立つ理由は腫れ・広がり・年齢の3つ
深くなったことを測った研究がない一方で、注入後にほうれい線が目立って見えることはあります。その理由として考えられるのは、腫れやしこりで口元の形が変わること、ヒアルロン酸が狙った位置の外へ広がること、唇とほうれい線の年齢による変化が重なることの3つで、1つとは限りません。どれに近いかで、待つか、相談するか、別の治療を考えるかが分かれます。
この章のポイント
・唇の腫れやしこりは1か月近く残ることがある
・注入歴のある人の約半数で位置の外へ広がっていた
・唇とほうれい線の変化は年代が重なる
腫れとしこりで口元の形が変わる
注入後しばらくは、腫れやしこりで唇とその周りの形がふだんと違って見えます。唇用の国内承認品の米国の試験では、注入後30日間の日誌で、腫れは93.0%、しこりは87.9%の人に出ました。腫れが出た人のうち47.3%は3日以内に引き、15〜30日続いたのは5.5%でした。一方、しこりが出た人では34.1%が15〜30日続いており、日誌は30日で終わるため、それを超えた分は分かりません。製造販売業者側の試験です。
唇に、多くの人ではほうれい線にも同時に注入したフランスの試験では、15〜30日目にも反応があったと本人が記録した割合は唇72%、ほうれい線34%で、30日目に医師が確かめた割合は唇35%、ほうれい線2%でした。比べる相手のいない試験で、製品を作る企業が資金を出し、著者の多くは同社の助言役を務めています。唇とほうれい線で別の製品が使われ、いずれも国内では承認されていない製品ですが、唇のほうが反応が長く残る傾向がうかがえます。
同じ唇用の承認品の試験では、数週間から数か月たってから腫れやしこりが出た人が6人おり、いずれも軽度から中等度で、後遺症なく消えたとされています。最初の1か月は、口元の形が普段と違って見える時期と考えておくのが現実的です。
狙った位置の外へ広がることがある
唇に入れたヒアルロン酸は、狙った位置の外へ広がることがあります。先述の超音波の研究では、注入歴のある52人のうち27人(52%)で、ヒアルロン酸が狙った位置の外へ広がっていました。針を唇に対して立てて刺す方法のほうが、水平に入れる方法より広がりが多く、水平に入れる方法では唇の輪郭の外への広がりはみられなかったと報告されています。
唇用の国内承認品の公式の説明書も、報告された好ましくない出来事として注入した位置のずれを挙げ、表皮に近い注入ではしこりや変色が起こることがあるとしています。頻度は示されていません。
この研究は注入からの期間がそろっておらず、広がりとほうれい線の見え方の関係は調べられていません。広がりは、唇の輪郭のすぐ上の皮膚のふくらみや段差として気づくことがあり、ほうれい線の深さとは分けて確かめる必要があります。
唇が薄くなる年代とほうれい線が深まる年代は重なる
唇が薄くなる変化とほうれい線が深まる変化は、どちらも年齢とともに進むため、時期が重なりえます。2012年に報告されたドイツの研究は、口元の加齢を写真・MRI・組織の3つの方法で調べ、年代が上がるほど上唇は長く、見えている赤い部分の高さは低い傾向を示しました。
MRIでは、唇の縁の高さでの上唇の厚みの中央値(参加者を並べたときの真ん中の値)が、若い世代の10.70mmに対して高齢の世代では8.75mmでしたが、断面積には差がなく、著者らは体積が減るよりも厚みが長さに置き換わると結論しています。写真の調査は白人が対象です。一方、2019年に報告されたベルギーの研究は、200人の頭部のMRIを20〜30歳と65〜80歳の世代で比べ、高齢の世代では上唇が長く、厚みが薄く、薄くなり方は小鼻の脇のほうれい線の上端で最も大きかったとしています。こちらの著者らは、体積の減少も上唇の加齢の特徴だと結論しています。体積が減るかどうかは研究によって結論が分かれますが、年齢とともに唇が長く薄くなる点はどちらの研究でも共通しています。いずれも同じ人を追った研究ではありません。先述の超音波の研究でも、年齢が高い人ほど唇は薄く、ふっくら感が少ない傾向でした。
ほうれい線の側も、先述の総説のとおり年齢とともに頬の脂肪の配置が変わります。注入の前からほうれい線が進んでいた可能性は、施術前の写真と比べないと分かりません。
3つの理由を、起きやすい時期と見分ける手がかり、主な対処で並べると次のようになります。
| 理由 | 起きやすい時期 | 見分ける手がかり | 主な対処 |
|---|---|---|---|
| 腫れ・しこり | 注入直後から約1か月 | 日ごとに形が変わる・硬い | 1か月後まで経過を見る |
| 狙った位置の外への広がり | 起きる時期は不明 | 唇の輪郭の外のふくらみ | 注入した医師に位置を相談 |
| 年齢による変化 | 施術の前から進む | 施術前の写真にも同じ線 | ほうれい線自体を評価 |
3つは重なることもあり、腫れやしこりは数週間から数か月たって出てくることもあります。
施術前に撮った写真がスマートフォンなどに残っているかを探しておくと、年齢による変化かどうかを見分ける手がかりになります。
見分けるのは腫れが引く1か月後
3つの理由のどれに近いかは、腫れやしこりが残っているうちは判断できないため、腫れが落ち着く1か月後に、施術前と同じ条件の写真と比べて見分けるのが目安です。ただし、皮膚が白っぽくなるなどの変化は待たずに連絡が必要です。
この章のポイント
・判断は腫れが引く1か月後まで待つ
・施術前と同じ条件で撮り比べる
・白くなる・強い痛みはすぐ連絡する
判断は1か月後まで待つ
注入の結果を判断するのは、腫れやしこりが落ち着く1か月後が目安です。唇用の国内承認品の公式の説明書は、処置した部位に反応が出た場合は消えるまで次の処置の間隔を空けることが望ましいとし、承認時の試験では追加の注入が初回の1か月後に行われていました。腫れがあると、注入の度合いを判断しにくいことも書かれています。
注入後24時間は、激しい運動、日光や高温に長く当たること、飲酒を避けるよう求められており、腫れた直後は短時間冷やしてもよいとされています。説明書にあるマッサージは医師が処置の最後に行うもので、患者が自分で行う方法は書かれていません。しこりを自分で押したりもんだりしてよいかは、施術した医師に確かめてください。
施術前と同じ条件で撮り比べる
自宅でできる見分け方の一例は、施術前と同じ条件で写真を撮り、並べて比べることです。診断ではなく、自分の変化を記録して相談の場で伝える材料をつくるための観察と考えてください。
- 施術前の写真と同じ場所・時間帯・距離で、無表情の正面と斜め45度から撮る
- 小鼻の脇から口角への線の長さと影の濃さを、施術前の写真と並べて比べる
- 両手の指で頬を耳の方向へ軽く持ち上げ、線が浅くなるかを見る
- 横と斜めから、唇の輪郭のすぐ上にふくらみや段差、硬いしこりがないかを見る
- 「い」の口の形でも撮り、笑った形での線の変わり方を施術前と比べる
- 日付をつけて保存し、2週間後と1か月後に同じ条件で撮り直す
施術前の写真にも同じ線があれば年齢による変化、唇の輪郭の外にふくらみがあれば広がり、日ごとに形が変わるなら腫れの要素が考えられますが、これは自己診断の基準ではありません。施術前の写真がない場合は、今日撮った写真を基準にして、以後の変化を比べます。
唇用の承認品と、後述の試験が行われたほうれい線用の承認品の公式の説明書は、いずれも処置前の写真撮影を勧めています。このほうれい線用の説明書は、指で伸ばして修正の効果を確かめられることが望ましいとしており、手順3はこの考え方を自宅での観察に置き換えた一例です。
すぐに連絡したい変化
注入中や直後、帰宅後でも、皮膚が白っぽくなる、強く痛むといった変化があれば、様子を見ずにすぐ施術を受けた医療機関に連絡してください。唇用の承認品の公式の説明書は、唇の血管に誤って注入されたときに最もよく見られる兆候として、この青白化と痛みを挙げています。1か月を待たずに連絡や相談をしたい変化は次のとおりです。
- 皮膚が白っぽくなる、強い痛みが続く
- 見え方の異常や、脳卒中を思わせる症状
- 数週間から数か月たって出てきた腫れやしこり
- 赤み・熱っぽさ・膿など感染を思わせる変化
- 1か月を過ぎても小さくならないしこり
上の2つは一刻を争うことがあるため、夜間や休日の連絡先を施術前に確かめておくと安心です。
注入日から1か月後の日付をカレンダーに入れ、その日に施術前と同じ条件で撮影して、2枚の写真を並べて保存しておいてください。
原因に合わせた対処と治療の選択肢
写真で見分けた理由によって、次の一手は変わります。腫れやしこりなら経過を見る、広がりや入れすぎなら溶かす注射の限界を知って医師と相談する、ほうれい線そのものなら唇とは別の承認品と部位の危険度を踏まえて考える、が基本です。何もせず記録を続けることも、十分に成り立つ選択です。
この章のポイント
・腫れとしこりはまず経過を見る
・溶かす注射は国内未承認で根拠も限られる
・ほうれい線は唇より失明の危険度が高い
腫れ・しこりは経過を見る
腫れやしこりが理由なら、まず経過を見ます。腫れの多くは1週間ほどで引き、しこりは1か月近く残ることがあります。唇用の承認品の試験では、処置に関連した反応は総じて特別な処置を要さずに後遺症なく消え、再処置のあとは初回より反応が軽く短く済みました。
ただし、1か月を過ぎても小さくならないしこりは相談の目安です。唇のふくらみそのものは長く残り、承認時の試験では12か月後も65.3%の人で、唇のふっくら感の段階が注入前より1段階以上高いままでした。自然に吸収されるのを待つ場合は、1年以上かかることもあると考えておく必要があります。
溶かす注射は国内未承認で根拠も限られる
ヒアルロン酸を分解する酵素(ヒアルロニダーゼ)の製剤は、ヒアルロン酸を溶かす目的では国内で承認されておらず、顔での効果を比べた試験もありません。国内で承認されていないとは、その目的で国の製造販売の承認を受けた製品がないことで、自由診療で使われていますが、保険は適用されません。国内の美容医療診療指針は、この酵素による分解の程度はヒアルロン酸の製品によって異なり、分解されにくいものもあると記しています。
分解酵素の研究を網羅的に調べた報告では、選ばれた5件の比較試験、計53人はいずれも米国で腕や背中の皮膚を対象にしたもので、顔でのヒアルロン酸の除去や入れすぎの修正を比べた試験はありませんでした。海外で承認されている製剤でも、承認された用途は皮下への輸液やほかの注射薬の吸収を助けることなどで、ヒアルロン酸注入材の分解は含まれていません。
溶かす処置を勧められたら、次の5点を確かめます。
- 国内未承認の製剤であること
- 製剤の入手経路(医師による個人輸入など)
- 国内に承認された同じ成分の製品の有無
- 海外での安全性に関する情報
- 副作用が出ても公的な救済制度の対象外であること
溶かしたあとに口元がどう見えるかについては、個別の症例の報告が中心で、まとまった数の人を調べた研究は限られています。溶かせば元に戻るとは言い切れません。
ほうれい線そのものを治療する場合
ほうれい線そのものが気になる場合は、唇とは別の承認品と部位ごとの危険度を踏まえて考えます。
ほうれい線用の承認品と注入の危険度
国内で承認されているヒアルロン酸注入材12製品のうち、唇のボリュームアップが使用目的に入るのは1製品で、ほうれい線などのしわを使用目的とする7製品は、いずれも唇への使用は承認された使い道に含まれないと明記しています。ほうれい線用の承認品の1つについて米国で行われた比較試験(123人)では、重症度の物差しで1段階以上改善した割合が、1か月で92.6%、6か月で93.2%、9か月で84.6%、12か月で57.5%でした。
改善は線が消えることではなく段階が1つ以上下がることを指し、9か月以降は左右差を整える追加の注入が認められていました。製造販売業者側の試験です。
国際的な専門家の合意は、注入で見え方の障害が起こる危険度を顔の部位ごとに4段階に分け、唇と口の周りを中程度、ほうれい線を高い区分に置いています。失明はごくまれで推計0.001%とされますが、発生率を測った数字ではありません。著者の多くが注入材メーカーとの利害関係を申告しています。
唇用とほうれい線用の承認品を並べると次のとおりです。
| 項目 | 唇用の承認品 | ほうれい線用の承認品 |
|---|---|---|
| 承認された使用目的 | 唇のボリュームアップなど | ほうれい線などのしわや溝 |
| 注入する層 | 唇の粘膜内・皮下 | 主に真皮の中層〜深層 |
| 承認時の試験の部位 | 唇と口の周り | ほうれい線 |
| 専門家の合意の危険度 | 唇・口の周りは中程度 | ほうれい線は高い |
製品ごとに細部は異なり、低い区分でも危険がないわけではありません。
注入以外の選択肢
先述の診療指針は、熱を加えてしわやたるみを改善する機器の治療について、効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばないとしています。2025年には、しわの改善を目的とする超音波の機器が国内で承認されましたが、その公式の説明書は、皮膚に注入材が入っている部位の真上への使用は安全性が確立されておらず、推奨していないとしています。
この機器は埋め込み型の電子機器がある部位や、治療する部位に傷・炎症・感染などがある場合には使えず、やけどや水ぶくれ、へこみ、色素の変化などが報告されています。
このほか、糸で頬の組織を引き上げる施術や、皮膚を切って引き上げる手術もあります。診療指針は糸による施術について、効果は大きくなく持続も短いことを十分に説明したうえで行うことを弱く勧めています。受けられない条件や起こりうる合併症は、方法や使う糸・機器ごとに異なるため、持病や服用中の薬、体内の医療機器や金属の有無を伝えたうえで確かめてください。どの方法が合うかは線の深さだけでなく頬側の組織の状態でも変わるため、診察で決まります。
待つ、溶かす、ほうれい線を治療する、の3つについて気になる点をメモに書き出しておくと、相談の場で優先順位を決めやすくなります。
追加で注入する前に確かめること
追加で注入する、あるいは溶かす処置を受けると決めた場合は、受ける前に確かめておきたいことがあります。自分が受けられる状態か、使う製品の承認の範囲と救済制度の扱い、トラブルが起きたときの備えの3点です。
この章のポイント
・受けられない人と副作用を先に確かめる
・使う製品の承認の範囲を確かめる
・分解酵素の備えと連絡先を聞いておく
受けられない人と主な副作用
ヒアルロン酸注入材にも分解酵素の製剤にも、使えない人と慎重な判断が必要な人が定められています。国内承認の注入材と、海外で承認されている分解酵素の製剤の説明書から並べると次のとおりです。
| 製剤 | 受けられない人 | 慎重な判断が要る人 | 主な副作用 |
|---|---|---|---|
| ヒアルロン酸注入材 | 成分・麻酔薬に過敏症、炎症や感染の部位 | 出血傾向・免疫の病気など | 腫れ・しこり、まれに失明 |
| 分解酵素の製剤(溶かす目的では国内未承認) | 成分に過敏症、感染や炎症の部位 | 服用中の薬・妊娠授乳中 | 注射部位の反応、まれにアレルギー |
すべてを網羅したものではないため、持病や服用中の薬がある場合は必ず申告してください。
ヒアルロン酸注入材では、製品の成分や、製品に含まれる麻酔薬と同じ種類の麻酔薬(アミド型局所麻酔薬)、製造に使う細菌に由来するたんぱく質に過敏症を起こしたことのある人には使わず、炎症や感染のある部位にも使いません。アレルギー体質、免疫の病気や免疫を抑える治療中、ケロイドになりやすい、血が止まりにくい、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)やアスピリンなどの痛み止めを使っている、レーザー治療やピーリングの予定がある人は、慎重な判断が必要です。製品に含まれる麻酔薬の影響を受けやすい、心臓の脈を伝える仕組みの障害や、重い肝臓や腎臓の病気がある人なども同様です。
妊娠中・授乳中や未成年の人への安全性は確立していません。唇用の試験では30日以内に97.5%の人に腫れや硬さ、内出血などの何らかの反応が出ており、まれに血管内への注入や圧迫による失明や脳卒中が起こりうるとされています。分解酵素の製剤は、アスピリンなどの解熱鎮痛薬、ステロイドや女性ホルモン、抗ヒスタミン薬を多く使っていると、効きにくくなることがあります。妊娠中に使った場合の赤ちゃんへの危険を評価できるデータはなく、母乳への移行や授乳中の赤ちゃんへの影響についての情報もありません。
承認の範囲と救済制度を確かめる
追加で注入するときは、使う製品が唇やほうれい線に承認された製品かを確かめます。先述のとおり、ほうれい線用の承認品はいずれも唇への使用を承認された使い道に含めていないため、ほうれい線用の製品を唇に使う場合は承認の範囲外です。先述の診療指針も、顔の若返り治療では、国内で承認されていない薬や材料、機器が数多く使われていると記しています。
唇用の承認品と、先述の試験が行われたほうれい線用の承認品の公式の説明書には、ほかの注入材ですでに治療した部位への注入は、臨床試験で安全性と有効性が確かめられていないと書かれています。前回の製品名と量は、施術を受けた施設の記録で確かめておきます。年間の使用量の上限は製品ごとに異なり、この2つの製品の説明書では、1人あたり体重60kgにつき20mLまでとされています。
医薬品の副作用には公的な救済制度がありますが、対象は承認された医薬品を適正に使った場合です。ヒアルロン酸注入材は医療機器のため対象外で、ヒアルロン酸を溶かす目的では国内未承認の分解酵素の製剤も対象になりません。厚生労働省は施術前の確認として、使う薬などを自分でも説明できるか、リスクや副作用とその起こる確率を理解したか、ほかの方法と比べたか、今すぐ必要か、の4点を挙げています。
トラブル時の備えと費用を聞いておく
トラブルが起きたときに対応できる備えがあるかも、事前に聞いておきます。先述の専門家の合意は、血管のトラブルに備えてすべての施設が分解酵素をすぐ使える状態にしておくべきだとしています。ヒアルロン酸を溶かす目的で承認された分解酵素の製剤は国内にないため、常備しているか、入手経路と使う方針を確かめる必要があります。唇用の国内承認品の説明書も、施設での処置に加えて、ほかの専門医による速やかな対処が必要な場合もあるとしています。
相談のときは、次の項目を聞いておくと判断しやすくなります。
- 使う製品の名前と、承認された使用目的に唇やほうれい線が含まれるか
- 前回の製品名・量・注入日の記録
- 分解酵素の常備と入手経路、使う方針
- ほかの医療機関への紹介体制と施術時間外の連絡先
- 追加や修正にかかる費用の総額(一般的な目安として)
施術後に困ったときの公的な相談先として、各地の医療安全支援センターがあります。
撮りためた写真と、この確認項目を書き出したメモを持って相談に行くと、自分の口元の状態に沿った説明を受けやすくなります。
唇のヒアルロン酸とほうれい線についてよくある質問
唇のヒアルロン酸とほうれい線について、よく寄せられる疑問に答えます。
唇のヒアルロン酸でほうれい線が深くなることはありますか?
唇の注入でほうれい線が深くなったことを測った研究はありません。唇用の承認品の説明書には、報告されている好ましくない出来事の一つに「しわや傷あとが深くなること」も挙げられていますが、どの部位か、どのくらいの頻度かは示されていません。目立って感じる理由としては、腫れやしこり、狙った位置の外への広がり、年齢による変化の重なりが考えられます。
唇に入れたヒアルロン酸の腫れはどのくらいで引きますか?
唇用の承認品の試験では、腫れが出た人の約半数が3日以内に引き、15〜30日続いたのは5.5%でした。しこりは出た人の約3人に1人が15〜30日続いたため、判断は1か月後が目安です。
ほうれい線用のヒアルロン酸を唇に使えますか?
国内のほうれい線用の承認品は、いずれも唇への使用を承認された使い道に含まないと明記しており、唇に使うと承認の範囲外です。唇用の承認品は別にあります。
唇とほうれい線に同時にヒアルロン酸を入れても大丈夫ですか?
一律に問題ないとは言えず、医師と相談して決めます。先述のフランスの試験では両方に別の製品が注入され、唇の反応のほうが長く残ったうえ、ほうれい線は唇より失明などの危険度が高い区分に置かれています。
唇に入れたヒアルロン酸は溶かせますか?
ヒアルロン酸を分解する酵素の製剤で溶かす処置はありますが、その目的で国内で承認された製剤はありません。ヒアルロン酸の製品によっては分解されにくいものがあり、顔での効果を比べた試験もありません。限界を理解したうえで医師と相談します。
まとめ
唇にヒアルロン酸を入れたあとにほうれい線が目立って見えても、唇の注入でほうれい線そのものが深くなったことを測った研究はありません。目立って感じる理由として考えられるのは腫れ・広がり・年齢の3つで、唇の腫れやしこりは1か月近く残ることがあります。まずは注入から1か月後に施術前と同じ条件で写真を撮り、並べて比べてみてください。
皮膚が白っぽくなる、強く痛むといった変化は、1か月を待たずにすぐ連絡します。追加の注入や溶かす処置を考えるなら、使う製品の承認の範囲、部位による危険度、分解酵素の備えを確かめてから決めても遅くはありません。研究や試験の数値は集団の記録で、個人の経過を約束するものではなく、いずれも海外で行われたものです。
アラジン美容クリニック福岡院では、「ウソのない美容医療の実現」をモットーに、患者様お一人ひとりの美のお悩みに真摯に向き合い、最適な治療をご提案しております。無駄な施術を勧めることなく、症状の根本的な原因にアプローチし、患者様の理想を実現するお手伝いをいたします。
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参考文献・出典
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